講演情報

[EP4-5]がん終末期患者に対する死に至るまでの口腔衛生管理

○岡本 美英子1、田中 紘子2、横井 美有希1、坂井 鮎2、蟹江 仁美2、川田 菜々子2、矢沢 麻生2、吉田 光由1 (1. 藤田医科大学 医学部 歯科・口腔外科学講座、2. 藤田医科大学病院 歯科・口腔外科)
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【緒言】がん終末期患者では口腔乾燥が発現しやすいと報告されている。我々の先行研究においても,専門的な歯科介入がされていない場合,口腔環境は死亡2週前までに著しく悪化し,そのまま死亡していくことが明らかとなった。そのため,がん終末期患者に対する口腔衛生管理が必須であると考えられるが,この時期の口腔衛生管理の効果はほとんど検討されていない。本研究では,がん終末期患者の死亡直前までの口腔衛生管理の効果について検討したので報告する。【対象】2022年6月から2023年5月までに藤田医科大学病院緩和ケアセンターならびに七栗記念病院に入院し,入棟時を含め週1回の歯科衛生士による口腔衛生管理を2回以上受けた後に死亡退院となった患者20名(男性14名,女性6名)を対象とした。対象者に対しOral Health Assessment Tool(OHAT)を用いた口腔内評価を行った後に,歯ブラシやスポンジブラシを用いたプラークや口腔剥離上皮膜の除去と口腔保湿剤による保湿を中心とした口腔衛生管理を行い,その介入時間を測定した。また,介入前後で口腔水分計ムーカス®を用いた口腔乾燥度とFace Rating Scaleを評価した。【結果】入院理由となった主疾患は肺癌が7名,胃癌が4名,直腸癌が2名,それ以外は7名であった。入院期間は平均27.3±19.0日であり,歯科の最終介入日から死亡退院までは平均2.8±1.8日であった。入棟時と比較して死亡前の最終介入時では,会話ができる者や自発的な開口ができる者は減少し,鎮痛剤や酸素を使用している者は増加していた。口腔衛生管理にかかる所要時間は入棟時と最終介入時で差はなく,口腔衛生管理前後でのFace Rating Scaleにも変化はなかった。口腔衛生管理前後の口腔乾燥度は,入棟時では21.0±8.3から26.7±3.2へ,最終介入時でも16.8±8.4から25.8±3.7へと有意に改善していた。【結論】終末期がん患者では口腔環境が悪化することが報告されているが,歯科専門職による口腔衛生管理により死亡直前の時期においても口腔乾燥を緩和できることが明らかとなった。最後の時を少しでも快適に過ごしてもらうためには,最期まで継続した口腔衛生管理が重要であると言える。(COI開示:なし)(藤田医科大学倫理審査委員会承認番号:HM21-415)