講演情報

[O-2-02]地域在住高齢者の口腔機能訓練継続実施における変化の背景に関する検討:能勢健康長寿研究(のせけん)

○吉本 美枝1、高阪 貴之2、福岡 智子3,4、小澤 純子5、上田 和美3,6、和田 誠大2、池邉 一典2 (1. 京都府歯科衛生士会、2. 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座、3. 大阪府歯科衛生士会、4. 大阪府能勢町福祉部健康づくり課、5. 大手前短期大学 歯科衛生学科、6. はぐくむ歯科クリニック)
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【目的】
 大阪府豊能郡能勢町は,介護予防事業のひとつとして,口腔機能訓練「かみかみ百歳体操」の実施に取り組んでいる。我々は2022年度より,大阪大学医学部保健学科とともに,同事業の効果検証を目的に,能勢健康長寿研究(のせけん)に参画し,“通いの場”にて歯科衛生士による歯科保健指導を実施している。このような取り組みの成功には,参加者が自主的に取り組みを継続するための行動変容を促す必要があるが,その要因は明らかではない.本研究では,地域在住高齢者を対象として追跡調査を実施し,口腔機能訓練についての行動変容にどのような因子が関わっているのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
 本研究は,“のせけん”において,2023年2月から3月のベースライン調査,および2024年8月から12月のフォローアップ調査に参加した146名(男性34名,女性112名,平均年齢77.1歳)とした。自宅での口腔機能訓練の有無について回答を得た結果,ベースライン時からフォローアップ時にかけて,自宅での訓練「あり」から「なし」に変化した者を非継続群,「なし」から「あり」に変化した者を開始群とした。ベースライン時における1日の歯磨き回数,主観的健康観について調査した。主観的健康観については,「普段,ご自分の健康についてどのようにお感じですか?」の質問に対し,「とても健康」「まあまあ健康」「あまり健康ではない」「健康ではない」より回答を得た。
【結果と考察】
 非継続群は15名(10.3%),開始群は26名(17.8%)であった。非継続群では,男性が7名(46.7%),女性が8名(53.3%)であったのに対し,開始群では,男性が5名(19.2%),女性が21名(80.8%)であった。1日の歯みがき回数について,「2回以上」と回答した者は,非継続群では12名(80.0%)であったのに対し,開始群では7名(26.9%)であった。主観的健康観について,「あまり健康でない」「健康でない」と回答した者は,非継続群では1名(6.7%)であったのに対し,開始群では6名(23.1%)であった。口腔機能訓練を始めるという行動変容に対しては,性別や口腔清掃意識,主観的健康観が関連している可能性が示された。本研究で得られた知見をもとに,今後は高齢者が訓練を継続できるよう,より効果的なアプローチ法を検討していく必要があると考えられる。
(COI開示:なし)
(大阪大学大学院歯学研究科・歯学部および歯学部附属病院倫理審査委員会承認番号:R4-E7)