講演情報
[O-2-03]Bayesian Cohort Modelによる日本人一人平均処置歯数のCohort分析,歯科疾患実態調査資料を用いて 第2報
○那須 郁夫1、中村 隆2 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所、2. 統計数理研究所)
【目的】
著者らは第34回本大会において,歯科疾患実態調査資料を用いたcohort分析により,近年の日本人現在歯数の改善,特に女性の改善速度が男性に優る要因として,齲蝕多発世代前後の女性処置歯数が男性を上回る点を挙げた。本報では主に時代背景が特定の世代に及ぼした影響の男女の比較を試みた。
【方法】
平成28年分までの同資料を用い,現在歯数とその内訳となる健全歯数,未処置歯数,処置歯数(充填歯数・金属冠歯数)について,性・年齢別(5歳以上の17年齢階級×11回)のcohort表を作成した。等計量線図による俯瞰的観察および,中村のBayesian Cohort Modelによるcohort分析を実施し,現在歯数を構成するこれらの指標ごとに時代・年齢・cohortの3効果について検討した。
【結果と考察】
cohort分析では,女性の歯数改善トレンドに着目した。1)時代効果:現在歯数は昭和62年を底とした後の改善で女性優位である。2)年齢効果:現在歯数は60歳以上で女性の方が低下が緩やかである。3)cohort効果:現在歯数は男女とも明治生れから戦前生れまで上昇し,途中昭和初年生れで女性の上昇が男性に対し優位に立ち昭和40年代生れで低下し始めるまで明らかな女性優位が続いた。健全歯数は昭和30年代生れ以降女性優位のままである。処置歯数のうち充填歯数は昭和生まれ以降,特に齲蝕多発世代で大幅に上昇していた。金属冠歯数は,大正生れから徐々に上昇し以後昭和30年代生れまで一定水準を保った。ここでも処置歯数の上昇時には女性が優位にあった。
等計量線図で男女を比較すると,時代の影響では,昭和36年の国民皆保険制度開始以降,男女とも未処置歯数減少が認められ,同時に4,50代女性の金属冠歯数が急増していた。世代への影響では,戦後の砂糖消費量増加による齲蝕多量発生は,対応策であったむし歯半減運動による治療勧奨により,結果として戦後教育世代の女性の処置歯数が男性に優る現象を生んだ。
これらから,わが国の成人女性の現在歯数の改善は,第二次予防としての積極的な歯科受診が奏効していたと考える。平成元年の8020運動開始は,これらの動向に拍車をかけたとみる。今後は齲蝕減少に伴い,重点は第一次予防となり,歯周組織保全との組合せによる改善が主流となろう。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
著者らは第34回本大会において,歯科疾患実態調査資料を用いたcohort分析により,近年の日本人現在歯数の改善,特に女性の改善速度が男性に優る要因として,齲蝕多発世代前後の女性処置歯数が男性を上回る点を挙げた。本報では主に時代背景が特定の世代に及ぼした影響の男女の比較を試みた。
【方法】
平成28年分までの同資料を用い,現在歯数とその内訳となる健全歯数,未処置歯数,処置歯数(充填歯数・金属冠歯数)について,性・年齢別(5歳以上の17年齢階級×11回)のcohort表を作成した。等計量線図による俯瞰的観察および,中村のBayesian Cohort Modelによるcohort分析を実施し,現在歯数を構成するこれらの指標ごとに時代・年齢・cohortの3効果について検討した。
【結果と考察】
cohort分析では,女性の歯数改善トレンドに着目した。1)時代効果:現在歯数は昭和62年を底とした後の改善で女性優位である。2)年齢効果:現在歯数は60歳以上で女性の方が低下が緩やかである。3)cohort効果:現在歯数は男女とも明治生れから戦前生れまで上昇し,途中昭和初年生れで女性の上昇が男性に対し優位に立ち昭和40年代生れで低下し始めるまで明らかな女性優位が続いた。健全歯数は昭和30年代生れ以降女性優位のままである。処置歯数のうち充填歯数は昭和生まれ以降,特に齲蝕多発世代で大幅に上昇していた。金属冠歯数は,大正生れから徐々に上昇し以後昭和30年代生れまで一定水準を保った。ここでも処置歯数の上昇時には女性が優位にあった。
等計量線図で男女を比較すると,時代の影響では,昭和36年の国民皆保険制度開始以降,男女とも未処置歯数減少が認められ,同時に4,50代女性の金属冠歯数が急増していた。世代への影響では,戦後の砂糖消費量増加による齲蝕多量発生は,対応策であったむし歯半減運動による治療勧奨により,結果として戦後教育世代の女性の処置歯数が男性に優る現象を生んだ。
これらから,わが国の成人女性の現在歯数の改善は,第二次予防としての積極的な歯科受診が奏効していたと考える。平成元年の8020運動開始は,これらの動向に拍車をかけたとみる。今後は齲蝕減少に伴い,重点は第一次予防となり,歯周組織保全との組合せによる改善が主流となろう。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)