講演情報

[O-2-04]当クリニックにおける高齢外来患者を対象としたインプラント補綴の実態調査

○佐藤 路子1,2、田中 公美1,2、加藤 陽子1,2、高橋 賢晃1,2、戸原 雄1,2、宮下 直也1,2、磯田 友子1,2、市川 陽子1,2、坂詰 智仁1,2、伊藤 瑞希1,2、田村 文誉1,2、菊谷 武1,2 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 インプラント治療の普及に伴い,受療者の増加と高齢化が進行し,インプラント治療医以外の歯科医師にも専門的なケアやトラブル対応が求められる状況となっている。今後、専門医によるメインテナンスが受療できない患者に対してインプラントの管理指針が必要となると考えられる。そこで、本研究は,言語・摂食嚥下リハビリテーションを専門としたクリニック外来患者を対象にインプラント受療者の割合,基礎疾患,ADL,口腔状態の実態を調査し,その現状を把握することを目的とした。
【方法】
 2022年7月から2024年11月30日までに歯科大附属クリニックを受診した65歳以上の初診外来患者250名(男性137名,女性113名,平均年齢80.4±7.2歳)を対象とした。全身情報として,併存疾患,Barthel Index(BI),基本チェックリスト(KCL)などを診療録から抽出した。口腔情報として,現在歯数,咬合支持の状況,インプラント補綴の有無,インプラントの周囲骨吸収,上部構造のトラブルの有無などを診療録およびエックス線写真で評価した。
【結果と考察】
 KCLでプレフレイルおよびフレイル(4以上)と判定された割合は,それぞれ21.9%および70.6%であった。BIが80点未満は29.6%を占めた。インプラント受療者は30名(12%)で,1人あたり平均3.0本のインプラントが埋入されていた。受療者の8名(26.6%)が認知症や神経筋疾患などの進行性疾患に罹患しており,9名(30%)にADLの低下がみられ,約86%がプレフレイル・フレイルであった。さらに,12名(40%)にインプラント周囲骨の吸収や上部構造の脱離などのトラブルが認められた。
 本研究により,生活機能の低下した高齢患者の12%がインプラント補綴を有し,その40%にトラブルが認められることが明らかになった。また,施術医の閉院や患者ADL低下による通院困難など,医療機関側と患者側双方の要因により,多くの受療者が適切なメインテナンスを継続できていない実態が浮き彫りとなった。今後は,インプラント補綴を有する高齢患者への専門的なケアと,メインテナンス体制の整備が不可欠である。
(COI開示:なし)
(日本歯科大学 倫理審査委員会承認番号NDU-T2024-43)