講演情報
[O-2-09]埋伏智歯により咽頭痛、嚥下時痛を生じた高齢患者の1例
○齊藤 美香1、武山 桂己1、佐藤 はるか1、森 美由紀1、平野 浩彦1、大鶴 洋1,2 (1. 東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科、2. 東京都)
【緒言・目的】今回われわれは、埋伏智歯により咽頭痛、嚥下時痛を生じた高齢患者の1例を経験したので、その概要を報告する。【症例および経過】患者:80歳、女性、主訴:咽頭痛、嚥下時痛 既往歴:左側大腿骨骨折術後、白内障術後、高血圧 現病歴:20XX年Y月Z-4日、朝食摂取時に咽頭痛、嚥下時痛を自覚した。同日夜、38度台の発熱があり、A病院へ緊急搬送された。点滴投与後、耳鼻咽喉科受診を勧められた。Z-1日、A病院耳鼻咽喉科を受診、ラスクフロキサシン塩酸塩、トラネキサム酸、アセトアミノフェンを処方されたが、症状は改善しなかった。その後、患者は膿の味を自覚、Z日に近在歯科を受診、右側下顎第3大臼歯による化膿性炎を示唆された。同日、当科を紹介された。現症:・全身所見:自立歩行可能、意識清明、意思疎通可能、理解力あり。・口腔内所見:右側咽頭粘膜は発赤していた。右側下顎第3大臼歯は視診不可も、同歯相当部舌側歯肉に瘻があり、排膿を認めた。・パノラマX線所見:右側下顎第3大臼歯は歯槽骨内にあり、近心咬頭が1部露出、根尖は下顎管と近接していた。・CT所見:右側咽頭部に軽度の腫脹があり、気道は左側に偏位していた。・血液検査値:WBC8.53×103μl、CRP6.5mg/dl・臨床診断:右側下顎第3大臼歯による化膿性炎 処置および経過:第1病日、アモキシシリン水和物、クラブラン酸カリウムアモキシシリン水和物、ロキソプロフェンナトリウム水和物を処方した。第6病日、咽頭部の発赤は軽減し、瘻は閉鎖、排膿も見られなかった。咽頭痛、嚥下時痛も消失した。第7病日、当院耳鼻咽喉科を受診した。扁桃周囲膿瘍の所見であり、智歯からの波及を指摘された。第14病日、右側口蓋部の腫脹、発赤は消失した。第29病日、局所麻酔下で右側下顎第3大臼歯を抜歯した。第36病日後、抜歯窩の洗浄、抜糸を行った。なお、今回の発表に際し、患者からの同意を得ている。【考察】本症例は、患者が膿の味に気づき、歯科へ受診したことで、咽頭痛や嚥下時痛の原因が埋伏智歯によるものと判明した。もし排膿がなかった場合や膿の味に気づかない場合、埋伏智歯の存在に気付かず、症状が重篤化していた可能性がある。埋伏智歯は、症状がない限り経過観察を行うことが多いが、急性化膿性炎の原因となり得ることを念頭に置く必要がある。
COI開示なし、倫理審査対象外
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