講演情報
[O-2-12]骨棘に伴う嚥下障害における頸部回旋の有効性の検討
○小林 愛奈1、木村 将典2,3、佐藤 理加子2、多田 瑛2、水谷 早貴2、天埜 皓太2、大塩 茉奈2、大塚 あつ子2、中尾 幸恵2、谷口 裕重2 (1. 朝日大学歯学部歯学科、2. 朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野、3. 日本大学歯学部 摂食機能療法学講座)
【目的】
頸椎骨棘は嚥下障害をきたすと報告されており,物理的な咽頭や食道の狭窄だけでなく,二次的に生じる食道の炎症,嚥下時の喉頭や喉頭蓋反転の運動の制限により生じるとされる。外科的に除去することにより嚥下障害が改善したと報告がある一方で,食道壁の線維化などにより嚥下障害が残存するとされており,手術はリスクが高いケースも多く,慎重に検討する必要がある。今回,頸椎骨棘を有する患者について,外科的処置を行わず,代償法の1つである頸部回旋法の有効性について検討したため報告する。
【方法】
朝日大学病院口腔管理・食支援センターに嚥下機能評価依頼のあった患者のうち,頸椎骨棘が原因と考えられた4例を対象とした。VFにて頸部回旋法の有効性を正面像で,正面位での左右の咽頭残留量,頸部回旋位での咽頭残留量を左右ともに評価して行った。頸部回旋位の方が正面位よりも喉頭侵入,もしくは誤嚥回避に有効であったか,その場合の頸部回旋位は左右のいずれかに限定されていたかについても評価した。(朝日大学病院倫理審査委員会,承認番号2024-03-01)
【結果と考察】
対象者は平均年齢84歳,4例とも男性であった。頸椎骨棘の位置はC4-C5,C4-C6,C3-C6,C3-C5であった。頸部回旋法の有効性については4例のうち4例ともに頸部回旋位の方が正面位と比べて喉頭蓋谷,梨状窩の残留量が減少した。また,4例のうち左頸部回旋位に限定して有効が3例,右頸部回旋位のみ限定して有効が1例であった。頸椎骨棘は頸椎だけでなく食道入口部付近にも生じる可能性があるため,左右非対称に骨棘が生じることにより左右のいずれかに限定して有効な頸部回旋位が生じた可能性が考えられる。頸椎骨棘を有する場合,VEでは喉頭腔が確認しづらく頻回の喉頭侵入により十分に精査できないことも少なくない。誤嚥性肺炎で入院後のVEやVFにて頸椎骨棘に伴う嚥下障害であることが判明するケースは少なくなく,そういった例では高齢であることやサルコペニアが進行しているために手術が難しい場合も多い。本研究ではVFを行うことで食道入口部通過の左右差を評価した結果を基に,頸部回旋法の指導を行うことにより頸椎骨棘患者の誤嚥を防ぐ方法の1つを示すことができたものと考えられる。(COI開示:なし)
頸椎骨棘は嚥下障害をきたすと報告されており,物理的な咽頭や食道の狭窄だけでなく,二次的に生じる食道の炎症,嚥下時の喉頭や喉頭蓋反転の運動の制限により生じるとされる。外科的に除去することにより嚥下障害が改善したと報告がある一方で,食道壁の線維化などにより嚥下障害が残存するとされており,手術はリスクが高いケースも多く,慎重に検討する必要がある。今回,頸椎骨棘を有する患者について,外科的処置を行わず,代償法の1つである頸部回旋法の有効性について検討したため報告する。
【方法】
朝日大学病院口腔管理・食支援センターに嚥下機能評価依頼のあった患者のうち,頸椎骨棘が原因と考えられた4例を対象とした。VFにて頸部回旋法の有効性を正面像で,正面位での左右の咽頭残留量,頸部回旋位での咽頭残留量を左右ともに評価して行った。頸部回旋位の方が正面位よりも喉頭侵入,もしくは誤嚥回避に有効であったか,その場合の頸部回旋位は左右のいずれかに限定されていたかについても評価した。(朝日大学病院倫理審査委員会,承認番号2024-03-01)
【結果と考察】
対象者は平均年齢84歳,4例とも男性であった。頸椎骨棘の位置はC4-C5,C4-C6,C3-C6,C3-C5であった。頸部回旋法の有効性については4例のうち4例ともに頸部回旋位の方が正面位と比べて喉頭蓋谷,梨状窩の残留量が減少した。また,4例のうち左頸部回旋位に限定して有効が3例,右頸部回旋位のみ限定して有効が1例であった。頸椎骨棘は頸椎だけでなく食道入口部付近にも生じる可能性があるため,左右非対称に骨棘が生じることにより左右のいずれかに限定して有効な頸部回旋位が生じた可能性が考えられる。頸椎骨棘を有する場合,VEでは喉頭腔が確認しづらく頻回の喉頭侵入により十分に精査できないことも少なくない。誤嚥性肺炎で入院後のVEやVFにて頸椎骨棘に伴う嚥下障害であることが判明するケースは少なくなく,そういった例では高齢であることやサルコペニアが進行しているために手術が難しい場合も多い。本研究ではVFを行うことで食道入口部通過の左右差を評価した結果を基に,頸部回旋法の指導を行うことにより頸椎骨棘患者の誤嚥を防ぐ方法の1つを示すことができたものと考えられる。(COI開示:なし)