講演情報

[O-2-13]嚥下改善術後患者の食物動態と咽頭内圧との関連

○水谷 早貴1、木村 将典2、佐藤 理加子2、大塚 あつ子2、中尾 幸恵2、多田 瑛2、天埜 晧太2、大塩 茉奈2、谷口 裕重2 (1. 朝日大学歯学部 障害者歯科学分野、2. 朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言・目的】
 嚥下改善術後の患者には適切な摂食嚥下リハビリテーションが必要であり術前後の機能評価に基づいた摂食嚥下リハビリテーションが重要となってくる。今回,嚥下改善術後,VF・VEに加えてマノメトリーにて検査を実施し,食物動態と咽頭圧との関連を考察したため報告する。
【症例および経過】
 76歳,男性。20XX年12月に左延髄外側症候群発症し左上下肢麻痺,嚥下障害が出現したが,3食軟飯・軟菜食摂取にて退院した。その後,訪問歯科診療にて介入し,食道入口部開大不全に対してバルーン訓練を継続した。20XX+2年5月にCOVID-19に感染後にADLが徐々に低下し,20XX+3年4月には,嚥下機能障害の進行も顕著にみられた。自宅では咳き込みながら食事をしておりVEでは慢性的な唾液誤嚥や食物の喉頭侵入も認めていた。継続的なリハビリを実施していたが症状の改善がみられないため,嚥下改善術を希望され,当院耳鼻科医へ情報共有し手術を依頼した。術前のVF・VEでは唾液誤嚥がみられ,中間のとろみ水分にて声帯レベルの喉頭侵入および咽頭残留を多量に認めた。頸部正中位では食物が左側優位に通過していたが,咽頭圧検査では左側食道入口部(UES)開大時間の短縮,咽頭圧形成不全を認めた。頸部回旋にて食物の通過は改善したが,唾液誤嚥を顕著に認めること,常時頸部回旋が困難なことより嚥下改善術の適応と判断した。耳鼻科医による喉頭挙上術,左側輪状咽頭筋切断,気管切開術を施行された。術後,一時的に嚥下機能は低下したが,間接訓練・直接訓練を継続したところ術後92病日目には唾液誤嚥が改善し,食事摂取も可能となった。咽頭圧の評価では左側UES開大時間の延長,咽頭圧形成の改善を認めた。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 本症例は延髄外側症候群の影響だけでなくCOVID-19を契機にした筋力低下に伴い嚥下障害が出現したと考える。嚥下改善術施行後,食道入口部の開大時間が延長したことで,正常な嚥下パターンに移行したことが嚥下圧上昇に繋がり,唾液誤嚥や食物動態が改善したと考えられる。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)