講演情報
[O-2-14]特別養護老人ホーム入所者における口腔機能低下症評価実施の可能性について
○渡邉 聡1、梅村 浩二郎1、今井 彩乃1、山﨑 翠1、二瓶 義勝1、北條 健太郎1、鈴木 史彦1 (1. 奥羽大学歯学部 歯科補綴学講座 高齢者歯科学)
【目的】特別養護老人ホーム入所者における口腔機能低下症の構成要素7項目について,検査の実施可能性について評価したので報告する。【方法】特別養護老人ホーム4施設の入所者のうち,口腔機能低下症の評価について同意の得られた52名(男性15名,女性37名,平均年齢86.9±7.4歳)を対象とした。口腔衛生状態不良には舌苔指数,口腔乾燥には口腔水分計,咬合力低下には残存歯数,舌・口唇運動機能低下にはオーラルディアドコキネシス,低舌圧には舌圧測定器,咀嚼機能低下には咀嚼能率スコア法,嚥下機能低下にはEAT-10をそれぞれ用いた。各項目について実施可能項目の割合を求めた。また,認知症および脳血管疾患後遺症の有無と実施可能項目の関係についても評価した。【結果と考察】認知症のみ該当は31人(59.6%),脳血管疾患後遺症のみ該当は8人(15.4%),認知症と脳血管疾患後遺症の両方が該当は6人(11.5%),いずれもない者は7人(13.5%)であった。実施が可能であったのは,舌苔指数が46人(88.5%),口腔水分計が40人(76.9%),残存歯数が50人(96.2%),オーラルディアドコキネシスが17人(32.7%),舌圧測定が24人(46.2%),咀嚼能率スコア法が5人(9.6%),EAT-10が6人(11.5%)であった。実施可能項目数は3と4が各14人(26.9%)ずつであり,平均項目数は3.6であった。認知症および脳血管疾患後遺症と,口腔機能低下症の各項目および実施可能項目数の間には有意な差は見られなかった。すなわち,認知症と診断されていなかったとしても,認知機能や身体機能の低下が口腔機能低下症の検査を困難にしていることが推察された。以上のことから,特別養護老人ホーム入所者において,口腔機能低下症の評価を十分な項目数で適切に評価することは困難である可能性が示唆された。(COI開示:なし)(奥羽大学 倫理審査委員会承認番号:第422号)