講演情報

[O-2-15]口腔機能低下症における嚥下機能低下評価への頸部装着型電子聴診器の応用

○松尾 浩一郎1、田中 美咲1、日髙 玲奈1、三上 理沙子1、金澤 学1、鈴木 健嗣2 (1. 東京科学大学、2. 筑波大学)
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★〔研究〕・〔調査〕の発表
【目的】
 口腔機能低下症は計測機器を用いた定量評価が行われるが,嚥下機能評価には嚥下障害スクリーニング用のアンケートが用いられている。今回われわれは,頸部装着型電子聴診器(Neck-Worn Electronic Stethoscope, NWES)を用いて嚥下機能低下の評価が可能か予備的検討を行った。
【方法】
 対象は,成人男女それぞれ10歳刻みの年齢層で募集し,20歳以上の健康な成人155名がインフォームドコンセントを得た上で本研究に参加した。口腔機能として,口腔機能低下症の7項目を評価した。また,NWESを頚部に装着した状態で,5mlの水を2回嚥下させ,それぞれの音声情報をNWESにて記録した。音声情報から自動的に嚥下クリアランス時間(Pharyngeal Clearance Time, PCT)を自動計算した。対象者を若年群(20〜49歳,64名),中年群(50〜69歳,49名),高齢群(70歳以上,42名)の3群に分類し,年代間,男女間におけるPCTの差異を二元配置分散分析にて分析した。また,PCTのカットオフを1.0秒としたときの嚥下機能低下の陽性率を算出し,χ2検定にて分析した。さらに,PCTと他の口腔機能測定項目との間の相関については,Pearsonの相関係数を求めた。
【結果と考察】
 PCTは,若年,中年,高齢群でそれぞれ,813.1±171.8,860.3±211.4, 893.0±228.8(ms)と年代が上がるほど延長し,若年群よりも高齢群で有意に延長していた(P = 0.021)。また,男女間差も大きくなったが統計学的な有意差は認めなかった(P = 0.054)。また嚥下機能低下の陽性率は,若年,中年,高齢群でそれぞれ,11.3%,22.9%,26.3%と有意差を認めた(P = 0.015)。PCTは,EAT-10による嚥下機能評価を含めて,すべての項目と有意な相関を認めなかった。 本結果より,NWESによる自動PCT評価ができることが示唆された。また,PCTが高齢者ほど延長していたことから,NWESによるPCT評価によって口腔機能低下症の嚥下機能低下の評価として使用できる可能性が示唆された。
(COI 開示:株式会社ジーシー・PLIMES株式会社)(東京科学大学 歯学系倫理審査委員会承認番号 D2022-053-01)