講演情報

[O-2-16]人間ドック定期受診者における生活習慣病に関する各種検査結果と口腔機能との関係

○坂井 鮎1、蟹江 仁美1、田中 紘子1、川田 菜々子1、矢沢 麻生1、岡本 美英子2、横井 美有希2、吉田 光由2 (1. 藤田医科大学病院 歯科・口腔外科、2. 藤田医科大学医学部歯科口腔外科学講座)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 生活機能が低下して生じるフレイルの2大原因は,生活習慣病と老化とされている。またフレイルは生活機能の低下に先んじて他者との交流の減少といった社会的なフレイルやオーラルフレイルから始まるともされており,このことから口腔機能の低下が生活習慣病にも影響を及ぼすことが想定されるが,これらの関係を検討した報告はこれまでに認められない。そこで本研究では,人間ドック定期受診時に生活習慣病に関する各種検査結果が基準値外となった者の口腔機能検査結果を基準値内の者と比較することで,生活習慣病と口腔機能との関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 2021年と2023年に藤田医科大学病院国際医療センターで実施されている人間ドックである高精度健診を受診した50歳以上の者118名(男性80名,女性38名,平均年齢67.4±9.7歳)とした。健診結果からBMI,最大血圧,血清コレステロール値(HDL,LDL),尿素窒素(BUN),推算糸球体濾過量(eGFR),空腹時血糖(GLU),HbA1c値を抽出し,それぞれ基準値内群と基準値外群に分けた。これらの群間で2021年の口腔機能検査7項目である舌苔付着度(TCI),口腔湿潤度,残存歯数,オーラルディアドコキネシス(OD),舌圧,咀嚼能力,EAT-10の結果をMann-WhitneyのU検定を用いて危険率5%にて比較した。
【結果と考察】
 各種検査結果が2023年の調査で基準値外になっていた者では,BMIで舌圧,最大血圧でTCIと残存歯数,脂質代謝であるHDLでTCIとOD,LDLでOD,腎機能ではBUNでTCIとOD,eGFRでTCIと残存歯数とOD,糖代謝ではGLUで残存歯数とOD,HbA1cで残存歯数とODが有意に低く,口腔機能の低下が2021年時点よりすでに存在していることが示された。本研究の結果,各種健診結果が基準値外となった者でTCI,残存歯数,ODといった口腔機能が低下していたことが明らかとなり,口腔機能の低下が生活習慣病のリスクを高めて,フレイルの進行に関わる可能性が考えられた。人間ドックといった健康診断の現場で口腔機能に関する検査を実施して生活習慣病予防の指導に活用することが,歯科からの健康増進につながるものと思われる。
(COI開示:なし)(藤田医科大学倫理審査委員会承認番号HM24-033)