講演情報

[O-3-01]祖父の看取り経験から考える終末期歯科医療のあり方

○高橋 あゆみ1、杉田 武士1,2、久保田 守1 (1. 医療法人久保田歯科医院、2. 神奈川歯科大学附属横浜クリニック麻酔科・歯科麻酔科)
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【緒言・目的】
高齢者の終末期における歯科医療は、口腔機能維持とQOL向上を目的とし、医科における緩和ケアと同様に重要な役割を担う。しかし、身体的・認知機能の低下、通院の困難さなど、様々な課題が存在する。祖父を看取った経験から、終末期歯科医療のあり方について考察をする。
【例報および経過】
症例は96歳男性。心筋梗塞によるバイパス手術以降、心不全症状による身体機能の低下に伴い入退院を繰り返し、介護が必要となった。祖父の負担を考慮し、在宅での介護を選択し、最期を看取る選択をした。祖父の好きな食事や趣味を積極的に取り入れ、家庭での環境改善に取り組み、最期を過ごすことができた。
【考察】
自身の経験を通じ終末期歯科医療では、身体的・金銭的な負担を強いる治療は避け、口腔衛生管理や口腔機能維持に重点を置くべきであると感じた。しかし、個々の状況は多様であり、一律の対応は困難であるため、身体的状態、認知機能などを考慮し、対応することが重要であると考えられた。
歯科医療では、摂食や疼痛など生活に大きく影響する場合には、積極的な治療介入が必要であるが、侵襲の高い治療や通院回数が多くなる治療などは、身体的・精神的な負担となり、QOLの低下を招く恐れもあるので慎重な判断が必要となる。
また、終末期医療では、口腔ケア、緩和ケアなど医療全般を連携し、統合的に行うことを考慮しなければならない。終末期における歯科医療は、まだ十分に確立された領域ではない。今後の課題としては、個々の状況に応じた評価方法、訪問診療の普及、緩和ケアとの連携の強化などが挙げられる。歯科医療従事者は、患者本人の希望を尊重し、周囲と連携しながら、最善のケアを提供していく必要がある。(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)