講演情報
[O-3-07]高齢者の食欲に影響を及ぼす咀嚼関連因子の検討(第2報)
○廣岡 咲1、井尻 吉信1 (1. 大阪樟蔭女子大学 人間科学研究科 人間栄養学専攻 臨床栄養学研究室)
【目的】
先行研究において,高齢者の食欲低下には咀嚼が関与している可能性が示された。そこで,複数の咀嚼評価法を用いて,食欲に影響を及ぼす咀嚼関連因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
東大阪市の歯科診療所において,定期的なメンテナンス目的で通院している高齢者91名(男性24名,女性67名)を対象に,身長・体重の測定,食欲の評価(CNAQ-J),残存歯数の評価,咬合支持域の評価,米菓摂取時の咀嚼回数・食事時間の測定を行った。
【結果と考察】
残存歯数中央値(24本)未満群は,中央値(24本)以上群に比べCNAQ-Jスコアが有意に低値を示した(平均値:29.1点,30.3点,p=0.02)。天然歯のみに存在する歯根膜は,咀嚼時にあらゆる方向から加わる外力に対して衝撃を和らげる働きや,食物の物性を感知し咬合力を反射的に調節する働きなど,咀嚼の微調整を行っている。このことから,天然歯が一定数減少した者は,歯根膜による咀嚼の微調整が難しくなり咀嚼に対する不自由感を感じることで,食欲が低下する可能性が考えられる。咬合支持域欠損群は,完全保持群に比べCNAQ-Jスコアが有意に低値を示した(平均値:29.1点,30.4点,p=0.02)。咬合支持域が1つ以上欠損している者は,4つ全て持つ者に比べ咀嚼能率が低値であったと報告されている。また,味覚が低下したと感じる者は,感じない者に比べ咀嚼能率が低値であったと報告している。このことから,咬合支持域が1つでも欠損している者は,咀嚼能率が低下し,食物中の呈味成分の溶出量が減少することで味を感じにくくなり,食欲が低下する可能性が考えられる。一方,咀嚼回数平均値(71.2回)以上群と平均値(71.2回)未満群との間には,CNAQ-Jスコアに有意な差は認められなかった。また,咀嚼時間中央値(83秒)以上群と中央値(83秒)未満群との間においても,CNAQ-Jスコアに有意な差は認められなかった。
(COI開示:なし)
(大阪樟蔭女子大学研究倫理委員会承認番号 24-13)
先行研究において,高齢者の食欲低下には咀嚼が関与している可能性が示された。そこで,複数の咀嚼評価法を用いて,食欲に影響を及ぼす咀嚼関連因子を明らかにすることを目的とした。
【方法】
東大阪市の歯科診療所において,定期的なメンテナンス目的で通院している高齢者91名(男性24名,女性67名)を対象に,身長・体重の測定,食欲の評価(CNAQ-J),残存歯数の評価,咬合支持域の評価,米菓摂取時の咀嚼回数・食事時間の測定を行った。
【結果と考察】
残存歯数中央値(24本)未満群は,中央値(24本)以上群に比べCNAQ-Jスコアが有意に低値を示した(平均値:29.1点,30.3点,p=0.02)。天然歯のみに存在する歯根膜は,咀嚼時にあらゆる方向から加わる外力に対して衝撃を和らげる働きや,食物の物性を感知し咬合力を反射的に調節する働きなど,咀嚼の微調整を行っている。このことから,天然歯が一定数減少した者は,歯根膜による咀嚼の微調整が難しくなり咀嚼に対する不自由感を感じることで,食欲が低下する可能性が考えられる。咬合支持域欠損群は,完全保持群に比べCNAQ-Jスコアが有意に低値を示した(平均値:29.1点,30.4点,p=0.02)。咬合支持域が1つ以上欠損している者は,4つ全て持つ者に比べ咀嚼能率が低値であったと報告されている。また,味覚が低下したと感じる者は,感じない者に比べ咀嚼能率が低値であったと報告している。このことから,咬合支持域が1つでも欠損している者は,咀嚼能率が低下し,食物中の呈味成分の溶出量が減少することで味を感じにくくなり,食欲が低下する可能性が考えられる。一方,咀嚼回数平均値(71.2回)以上群と平均値(71.2回)未満群との間には,CNAQ-Jスコアに有意な差は認められなかった。また,咀嚼時間中央値(83秒)以上群と中央値(83秒)未満群との間においても,CNAQ-Jスコアに有意な差は認められなかった。
(COI開示:なし)
(大阪樟蔭女子大学研究倫理委員会承認番号 24-13)