講演情報

[O-3-09]嚥下内視鏡と外部観察を用いた咀嚼嚥下時の顔面運動評価

○鈴木 鵬生1、渡辺 昌崇1、鈴木 啓之1、浪川 夏絵1、平山 茉奈1、田畑 友寛1、山根 邦仁2、向井 友子2、内田 淑喜1、畑中 幸子1、下平 修1、古屋 純一1 (1. 昭和医科大学 大学院歯学研究科 口腔機能管理学分野、2. 昭和医科大学 歯学部 口腔健康管理学講座 口腔機能管理学部門)
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【目的】咀嚼嚥下は食形態の維持・向上に直結するため,高齢者にとっても重要な口腔機能であり,適切な咀嚼嚥下機能の評価が重要である。しかし,要介護高齢者に対する食支援の現場では,嚥下内視鏡検査が困難な場合もあり,簡便に咀嚼・嚥下機能を評価できる方法が求められている。咀嚼嚥下時の顔面運動は,外部から非侵襲的に観察が可能であり,その解決の一助を担うと考えられる。外部観察による咀嚼嚥下時の顔面運動の評価は,先行研究では定性的評価が主であり,定量的評価を行った研究はほとんどない。そこで本研究は,咀嚼開始から嚥下に至るまでの顔面運動の特徴を定量的に解明することを目的とした。【方法】健常有歯顎者20名(25.8±2.2歳)を対象に米菓(ハッピーターン,亀田製菓) 2gを自由に咀嚼嚥下させた。経鼻内視鏡(FNL-10RBS,PENTAX)にて咽頭の映像を記録し,小型携帯端末(iPhone 11,Apple)にて顔面の正面像を記録し,それぞれを同期させた。顔面には事前に,鼻尖,左右口角,オトガイにマーカーを付与した。一連の咀嚼嚥下運動を,咀嚼開始からStage II transport発生前(以後,Phase 1),Stage II transportから嚥下まで(以後,Phase 2)の2期に分類した。動画解析ソフト(DIPP-MOTION, ディテクト)にて,咀嚼の頻度,水平的最大運動距離,垂直的最大運動距離,平均速度,総運動距離を算出し,各Phase間でWilcoxonの符号付順位検定を用いて解析を行った。有意水準は5%とした。【結果と考察】左右口角とオトガイにおける水平的最大運動距離(左右),垂直的最大運動距離(下方),平均速度,総運動距離,咀嚼の頻度は, Phase 1と比較してPhase 2で有意に減少した。一方,垂直的最大運動距離(上方)は有意な差は認められなかった。Stage II transportによって食塊の一部が口腔から咽頭へ舌によって能動的に搬送されると,口角やオトガイの運動が小さくなることが明らかとなった。特に,咀嚼嚥下時の外部観察においては,口角やオトガイの左右および下方への運動に着目することで,食塊搬送や食塊の位置をある程度推察できる可能性が示唆された。(COI 開示:なし)(昭和大学 倫理審査委員会承認番号 2023-255-A)