講演情報

[O-3-18]舌筋の周波数特性と身体的特徴,身体活動量の関連

○横山 滉1、萬田 陽介1、兒玉 直紀2、秋山 謙太郎1 (1. 岡山大学学術研究院医歯薬学域 咬合・有床義歯補綴学分野、2. 岡山大学病院 歯科・補綴歯科部門)
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【目的】
 加齢に伴う舌後方部の筋への脂肪浸潤が最大舌圧を低下させる可能性など,舌の組織学的変化と口腔機能の関連が注目されているものの,十分な知見は未だ蓄積されていない。近年,舌の表面筋電図を用いた測定技法が開発され,舌機能の客観的評価や口腔機能低下の早期発見への応用が期待されている。本研究では,若年者における舌の筋電図学的特性のベースラインを確立し,最大舌圧や身体的特徴,身体活動評価,超音波検査との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 対象は18歳以上40歳未満の健常成人20名(男性10名,女性10名,平均年齢 27.3±4.9歳)とした。評価項目は身長・体重・身体活動評価(METs),左右の握力・下腿周囲長,舌前方部と後方部の超音波検査結果,最大舌圧,筋電図周波数とした。被験運動は最大舌圧の80%の圧力での舌挙上運動とし,疲労により舌が挙上できなくなるまでの筋活動を記録した。記録開始から終了までの期間を前期・中期・後期に分割し,各区間の平均周波数を求め,前期~中期,中期~後期,前期~後期における周波数変化率を算出し,その他の評価項目との関連を解析した。統計解析には主成分分析を用い,次元削減された主成分を説明変数,筋電図周波数変化率を目的変数としたリッジ回帰モデルを構築し,統計的有意性を確認した。
【結果と考察】
 主成分分析の結果,舌前方部・後方部ともに第1主成分から第4主成分で累積寄与率80%に到達した。これらの主成分を説明変数とした回帰分析の結果,舌前方部では最大舌圧や握力と関連する主成分が,中期〜後期の筋電図周波数変化率に有意な影響を与えた。これは,舌前方部に多く含まれるタイプIIA線維の疲労を反映していると考えられるが,モデルの説明力には限界があり,さらなるデータ収集が必要である。一方,舌後方部では性別,身長,体重,下腿周囲長,METsと関連する主成分が,前期〜後期の周波数変化率に有意な影響を与えた。舌後方部のタイプIおよびタイプIM/IIC線維は持続的な筋活動において高い疲労耐性を持つが,その発達が身体的特徴や日常運動量に影響を受けることが示唆された。これらの結果は,舌の疲労メカニズムが,全身の身体活動や生活習慣と複雑に関連している可能性を示唆している。
COI 開示:なし
岡山大学 倫理審査委員会承認番号 2403-052