講演情報

[O-3-19]嚥下調整食分類,パン版を作成後の比較研究

○大塚 あつ子1、木村 将典1、多田 瑛2、水谷 早貴3、天埜 皓太1、中尾 幸恵1,4、在川 一平5、谷口 裕重1 (1. 朝日大学歯学部摂食嚥下リハビリテーションテーション学分野、2. 朝日大学歯学部口腔外科学分野、3. 朝日大学歯学部障害者歯科学分野、4. 医療法人社団登豊会近石病院 歯科・口腔外科、5. フードケア)
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【目的】
 高齢化に伴い,食物の窒息は問題となっており,米飯は様々な物性に変え摂食嚥下障害患者でも摂取されているが,パンには嚥下分類がなく摂取可能か否かの二択である。前回の研究では,日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021コード2~4にならい,市販のパンを加工し,それぞれのコードに適応したパンのコード分類作成を行った。今回,作成したパンのコード分類を用いて摂食嚥下動態を確認したため報告する。
【方法】
 対象は健常成人男性13名(34.5±10.2歳,残存歯数28.7±1.3本),被検食は市販の食パンとそれを加工したもの(加工パンコード4・3・2)4種類と,米飯・軟飯・全粥・粥ゼリーの4種類で,一口量各8gずつ(造影剤を添加)を2回摂取した際の摂食嚥下動態をVFにて撮影した。咀嚼回数,嚥下回数,嚥下惹起ポイント,嚥下開始時間,残留量の5項目について計測しSPSSを用いMann-WhitneyのU検定,Kruskal-Wallisの検定にて比較検討した。尚,食パンを加工したパンは,以下パンコードと記載する。
【結果と考察】
 総咀嚼回数は,パン群においては,パンコード2と4(P=0.00),パンコード2と加工なしパン(P=0.00),パンコード3と4(P=0.006),パンコード3と加工なしパン(P=0.009)に有意差を認め,米群においては,粥ゼリーと軟飯(P=0.003),粥ゼリーと米飯(P=0.00),全粥と米飯(P=0.006)に有意差を認めた。嚥下回数はパン群では,パンコード2と4(P=0.002),パンコード2と加工なしパン(P=0.003),パンコード3と4(P=0.006),パンコード3と加工なしパン(P=0.009)と複数間に有意差を認めたが,米群では全てにおいて有意差はなかった(P=0.257)。また,パン群と米群での比較では,パンコード4と軟飯で,総咀嚼回数(P=0.001)と嚥下回数(P=0.034)に有意差を認めた。今回,米の分類とパンで作成した分類を比較した場合,それぞれ物性測定値が概ね近似していることが分かったが,パンコード4と軟飯を比較した場合は摂食嚥下動態が異なった。また,パン群でのみ形態変化による嚥下回数の違いを認め,パンコード4や加工なしパンのように形態が上がると嚥下回数が増加した。これは,パンは米に比べて摂取労力を要するといえる。今後は,摂食嚥下障害患者でも健常者と同様の検証をしていくことが課題である。(COI 開示:なし)(朝日大学倫理審査委員会承認番号 2024‐01‐03)