講演情報
[課題1-3]地域包括ケア病棟入院患者における退院困難要因と口腔環境の関連性
○佐藤 穂香1、中村 純也1、釘宮 嘉浩1、横山 惟子1、守谷 恵未1、永井 彩絵1、村上 正治1 (1. 国立長寿医療研究センター 歯科口腔外科部)
【目的】
限られた入院期間の中で退院後も住み慣れた地域で過ごせるように,入院早期より多職種で退院支援を行うことが推奨されている。医科には入退院支援加算という診療報酬も存在しており,令和6年度の診療報酬改定においてもリハビリテーション・栄養・口腔の連携とともに注目されている。しかし現状は,医科の退院支援に歯科医療職が十分に関われているとはいえず,退院支援が必要な患者の口腔環境についても明らかではない。そこで本研究では,地域包括ケア病棟入院患者における退院困難要因と口腔環境の関連性について検討した。
【方法】
対象は,2024 年 4月から11月までの8カ月間に当院地域包括ケア病棟に入院し歯科が介入した患者 102名 (男性 51名,平均年齢 83.3±9.2 歳)とした。退院困難要因は,入院当日に看護師が評価した,厚生労働省が定めた入退院支援加算に関連する退院困難要因13項目を用いた。また口腔環境は日本語版Oral Health Assessment Tool(OHAT-J)を用いて評価した。その他の変数として,年齢,性別,BMI,慢性疾患数,認知機能,日常生活動作,栄養状態,生活環境を調査した。まず、退院困難要因13 項目それぞれの該当有無における口腔環境をMann-Whitney U検定を用いて比較検討した。さらに、口腔環境を従属変数,退院困難要因の該当数を独立変数,年齢,性別,慢性疾患数,生活環境を調整変数とした線形回帰分析を行った。
【結果と考察】
退院困難要因該当数の中央値は3(2,4),口腔環境の中央値は4(3,7)であった。退院困難要因13項目の内,「悪性腫瘍,認知症または誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること」「排泄に介助を要すること」「入院治療を行っても長期的な低栄養状態となることが見込まれること」の3項目に該当するものは口腔環境が有意に不良であった。線形回帰分析の結果、退院困難要因と口腔環境は正の関連を認めた(B=0.62,95%CI:0.04-0.91)。本研究により,退院困難要因が重複する者は,口腔環境も不良な傾向にあることが分かった。医科の退院支援に歯科が早期から連携する重要性に加え,退院困難要因が口腔環境不良の気づきのひとつとなる可能性が示された。
(COI 開示:なし)
(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会承認番号1856)
限られた入院期間の中で退院後も住み慣れた地域で過ごせるように,入院早期より多職種で退院支援を行うことが推奨されている。医科には入退院支援加算という診療報酬も存在しており,令和6年度の診療報酬改定においてもリハビリテーション・栄養・口腔の連携とともに注目されている。しかし現状は,医科の退院支援に歯科医療職が十分に関われているとはいえず,退院支援が必要な患者の口腔環境についても明らかではない。そこで本研究では,地域包括ケア病棟入院患者における退院困難要因と口腔環境の関連性について検討した。
【方法】
対象は,2024 年 4月から11月までの8カ月間に当院地域包括ケア病棟に入院し歯科が介入した患者 102名 (男性 51名,平均年齢 83.3±9.2 歳)とした。退院困難要因は,入院当日に看護師が評価した,厚生労働省が定めた入退院支援加算に関連する退院困難要因13項目を用いた。また口腔環境は日本語版Oral Health Assessment Tool(OHAT-J)を用いて評価した。その他の変数として,年齢,性別,BMI,慢性疾患数,認知機能,日常生活動作,栄養状態,生活環境を調査した。まず、退院困難要因13 項目それぞれの該当有無における口腔環境をMann-Whitney U検定を用いて比較検討した。さらに、口腔環境を従属変数,退院困難要因の該当数を独立変数,年齢,性別,慢性疾患数,生活環境を調整変数とした線形回帰分析を行った。
【結果と考察】
退院困難要因該当数の中央値は3(2,4),口腔環境の中央値は4(3,7)であった。退院困難要因13項目の内,「悪性腫瘍,認知症または誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること」「排泄に介助を要すること」「入院治療を行っても長期的な低栄養状態となることが見込まれること」の3項目に該当するものは口腔環境が有意に不良であった。線形回帰分析の結果、退院困難要因と口腔環境は正の関連を認めた(B=0.62,95%CI:0.04-0.91)。本研究により,退院困難要因が重複する者は,口腔環境も不良な傾向にあることが分かった。医科の退院支援に歯科が早期から連携する重要性に加え,退院困難要因が口腔環境不良の気づきのひとつとなる可能性が示された。
(COI 開示:なし)
(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター倫理・利益相反委員会承認番号1856)