講演情報

[課題2-4]フレイル健診参加者におけるオーラルフレイルとロコモティブシンドロームとの関連

○佐藤 瑛子1、大井 孝1,2、小宮山 貴将1,3、佐藤 萌恵1、服部 佳功1 (1. 東北大学歯学研究科加齢歯科学分野、2. 石巻赤十字病院歯科、3. Centre for Host Microbiome Interactions, King’s College London)
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【目的】
 オーラルフレイルは,嚥下や咀嚼機能の低下を介し,低栄養,筋力低下,身体活動低下を引き起こし,ロコモティブシンドローム(ロコモ)のリスクを高め,生活の質を低下させると考えられる。しかし,地域在住高齢者を対象とした両者の関連研究は少ない。本研究では,フレイル健診に参加した地域在住高齢者を対象に,口腔状態の包括的リスク評価であるオーラルフレイルとロコモとの関連を横断的に検討する。
【方法】
 対象は2024年6月から8月までに宮城県と秋田県の各自治体が抽出した健診参加者439名(女性357名,平均年齢77.7±5.5歳)とした。オーラルフレイルは二つの指標を用いた。先行研究に準じた指標では,現在歯数,客観的咀嚼能力,舌圧,舌口唇運動機能,主観的咀嚼能力,嚥下困難感の6項目のうち3つ以上に該当するものをオーラルフレイルとした。Oral frailty 5-item Checklist(OF-5)では,現在歯数,咀嚼困難感,嚥下困難感,口腔乾燥感および滑舌低下(オーラルディアドコキネシス「タ」音;6回未満/秒)の5項目のうち2つ以上に該当するものをオーラルフレイルとした。日本整形外科学会が提唱した基準を用いて立ち上がりテスト,2ステップテスト,ロコモ25を採取し,ロコモ度1から3のいずれかに該当したものをロコモと判定とした。両者の関連はロジスティック解析を用いて検討し,オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。共変量は年齢,性別,教育歴,喫煙歴,飲酒歴,握力,BMI,既往歴(骨粗鬆症,糖尿病,高血圧,関節炎)とした。
【結果と考察】
 ロコモに該当したのは321名(73.1%),オーラルフレイルに該当したのは,Tanaka et alの基準で111名(25.3%),OF-5では205名(46.7%)であった。多変量解析の結果, Tanaka et alの基準(OR, 6.91; 95%CI, 2.82‐16.9)およびOF-5(OR, 4.11; 95%CI, 2.46-6.88)で判定したオーラルフレイルはロコモと有意に関連していた。歯科医療専門職が判定に関与するオーラルフレイル,非歯科医療専門職でも評価可能なOF-5のいずれもロコモと関連することが明らかとなった。(東北大学歯学研究科研究倫理委員会承認番号:35745)(COI開示なし)