講演情報
[課題2-5]構音・摂食嚥下に関する主訴で受診した高齢患者の原因疾患追究
○濱田 理愛1、田中 信和1、野原 幹司2、尾花 綾1、藤井 菜美1、五條 菜央1、川道 春奈1、阪井 丘芳2 (1. 大阪大学歯学部附属病院 顎口腔機能治療部、2. 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能治療学講座)
【目的】
口腔機能低下症の概念が一般に認知されるにつれ,「滑舌が悪い」,「食事時にむせる」など構音・摂食嚥下に関する症状を主訴に歯科を受診する高齢者が増加している.そのような患者の精査の結果,構音・摂食嚥下障害の診断に至った患者も散見され,全身疾患の初発症状として機能障害が生じる場合もあり,注意が必要である.機能障害の原因が全身疾患である場合,医科と連携した対応が必要とされるため,原因疾患の探索は非常に重要である.そこで今回,構音・摂食嚥下に関する症状を主訴に専門外来である当部を受診した高齢者を対象に,機能障害と診断された患者の割合やその原因疾患についての報告を行う.
【方法】
対象は,2017~2023年で,構音・摂食嚥下に関する症状を主訴に当部を初診した高齢者286名(男:女=159:127,平均75.5歳 SD 8.6)とした.診療録より,①初診時に判明していた主訴の原因疾患,②主訴の原因疾患が不明であった患者のうち構音・摂食嚥下障害と診断された患者の割合,③診断された原因疾患を調査した.
【結果と考察】
初診時に脳卒中後遺症や頭頸部腫瘍の治療後など原因が判明していた患者は47%(133/286名)で,原因が診断されていなかった患者は53%(153/286名)と半数以上を占めた.原因不明の患者153名のうち,精査の結果,自覚症状はあるものの検査上異常なし・機能低下レベルと判断した患者は42%(64/153名),構音・摂食嚥下障害ありと診断された患者は58%(89/153名)と,機能障害を認めた患者は約6割に及んだ.89名中,当部の診察にて,口腔の器質的な障害が原因と診断された患者は10名のみで,大半の79名は原因に全身疾患が強く疑われた.機能障害の原因に全身疾患を疑った患者および機能低下レベルでも全身疾患が疑われた患者に対して原因精査を目的として医科紹介した結果,41名にALSなどの神経変性疾患や食道癌などの悪性腫瘍といった様々な全身疾患が認められた.中には,医科でも全身的な疾患はあるが確定診断ができない症例も含まれていた.以上から,構音・摂食嚥下に関する症状を主訴に歯科を受診する高齢者においては,構音・摂食嚥下障害と診断され,その原因に全身疾患が発見されることがある.また,機能障害に至らない機能低下のレベルでも,全身疾患が潜んでいる可能性もある.そのため,口腔周囲の症状のみに着目するのではなく,その症状の原因の探索や医科との連携が重要である.
(COI開示:なし)
(大阪大学倫理審査委員会承認番号:R2-E14)
口腔機能低下症の概念が一般に認知されるにつれ,「滑舌が悪い」,「食事時にむせる」など構音・摂食嚥下に関する症状を主訴に歯科を受診する高齢者が増加している.そのような患者の精査の結果,構音・摂食嚥下障害の診断に至った患者も散見され,全身疾患の初発症状として機能障害が生じる場合もあり,注意が必要である.機能障害の原因が全身疾患である場合,医科と連携した対応が必要とされるため,原因疾患の探索は非常に重要である.そこで今回,構音・摂食嚥下に関する症状を主訴に専門外来である当部を受診した高齢者を対象に,機能障害と診断された患者の割合やその原因疾患についての報告を行う.
【方法】
対象は,2017~2023年で,構音・摂食嚥下に関する症状を主訴に当部を初診した高齢者286名(男:女=159:127,平均75.5歳 SD 8.6)とした.診療録より,①初診時に判明していた主訴の原因疾患,②主訴の原因疾患が不明であった患者のうち構音・摂食嚥下障害と診断された患者の割合,③診断された原因疾患を調査した.
【結果と考察】
初診時に脳卒中後遺症や頭頸部腫瘍の治療後など原因が判明していた患者は47%(133/286名)で,原因が診断されていなかった患者は53%(153/286名)と半数以上を占めた.原因不明の患者153名のうち,精査の結果,自覚症状はあるものの検査上異常なし・機能低下レベルと判断した患者は42%(64/153名),構音・摂食嚥下障害ありと診断された患者は58%(89/153名)と,機能障害を認めた患者は約6割に及んだ.89名中,当部の診察にて,口腔の器質的な障害が原因と診断された患者は10名のみで,大半の79名は原因に全身疾患が強く疑われた.機能障害の原因に全身疾患を疑った患者および機能低下レベルでも全身疾患が疑われた患者に対して原因精査を目的として医科紹介した結果,41名にALSなどの神経変性疾患や食道癌などの悪性腫瘍といった様々な全身疾患が認められた.中には,医科でも全身的な疾患はあるが確定診断ができない症例も含まれていた.以上から,構音・摂食嚥下に関する症状を主訴に歯科を受診する高齢者においては,構音・摂食嚥下障害と診断され,その原因に全身疾患が発見されることがある.また,機能障害に至らない機能低下のレベルでも,全身疾患が潜んでいる可能性もある.そのため,口腔周囲の症状のみに着目するのではなく,その症状の原因の探索や医科との連携が重要である.
(COI開示:なし)
(大阪大学倫理審査委員会承認番号:R2-E14)