講演情報

[SY1-1]臨床基礎実習と診療参加型臨床実習を通した口腔機能低下症の学生教育

○竜 正大1 (1. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座)
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【略歴】
2005年 東京歯科大学卒業
2009年 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科補綴学専攻)修了
2009年 東京歯科大学有床義歯補綴学講座 助教
2014年 スイス・バーゼル大学歯学部補綴科 客員教授
2015年 東京歯科大学老年歯科補綴学講座 助教(改組による)
2016年 東京歯科大学老年歯科補綴学講座 講師
2021年 東京歯科大学老年歯科補綴学講座 准教授
口腔機能低下症は2016年に日本老年歯科医学会が提唱し、2018年4月に保険収載された病名であり、歯学教育モデル・コア・カリキュラム令和4年度改訂版にも新たに収載された項目である。口腔機能の低下を早期に適切に診断し、適切な管理と動機付けを行うことで、口腔機能低下のさらなる重症化を予防するとともに、口腔機能を維持、回復することにより国民の健康長寿の延伸に貢献できると考えられる。そのためには、学生教育において口腔機能低下症の理解を深めることが非常に重要と考えられる。
 口腔機能低下症は、口腔機能精密検査を行い、口腔衛生状態不良、口腔乾燥、咬合力低下、舌口唇運動機能低下、低舌圧、咀嚼機能低下および嚥下機能低下といった7つの下位項目のうち3項目以上該当する場合に診断される。口腔機能検査の正しい実施法と診断について卒前教育の臨床実習で履修しておくことは、口腔機能低下症の理解のために非常に重要なステップであると考えられる。
 東京歯科大学では、2015年から第5学年の診療参加型臨床実習において口腔機能検査の相互実習を実施するとともに、自験ケースとして口腔機能検査を患者に対して全学生が実施している。また、2019年からは第3学年の臨床基礎実習でも口腔機能検査の実習を実施している。これらの実習においては、当講座が製作した実習マニュアルと教育用動画を使用し、教育を行ってきた。また、コロナ禍においてはオンラインによる口腔機能検査の実習も行ってきた。
 一方で、これらの学生教育においては、全国の歯学部、歯科大学において高い同一の品質の教育を提供することも重要である。日本老年歯科医学会では、口腔機能低下症を診断するための7 項目の口腔機能検査法と評価に関する理解を卒前教育におけるミニマムの履修内容と考え、2024年8月に診療参加型臨床実習マニュアル「口腔機能低下症の検査」を公開した。このマニュアルには当講座がこれまで実施してきた内容も網羅されており、指導者と学生双方にとって非常に意義のあるものとなっている。加えて、このマニュアルの内容を視覚的に理解する一助とし、より充実した臨床参加型実習を実施できるように、日本老年歯科医学会では教育用動画「口腔機能低下症の検査」の制作も行っている。本学では、今年度からこの診療参加型臨床実習マニュアルを臨床実習に取り入れて教育を行っている。
 本講演では、本学の卒前教育における臨床基礎実習と診療参加型臨床実習を通した口腔機能低下症の教育内容とその変遷をご紹介するとともに、診療参加型臨床実習マニュアル「口腔機能低下症の検査」および教育用動画「口腔機能低下症の検査」の内容とその活用法について整理し、口腔機能低下症の学生教育について考えてみたい。