講演情報

[SY3-2]総合歯科専門医としての障害者歯科医療

○小笠原 正1 (1. よこすな歯科クリニック(公益社団法人日本障害者歯科学会)院長 専門医委員会委員長)
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【略歴】
1983年 松本歯科大学卒業
 松本歯科大学障害者歯科学講座助手
1990年 松本歯科大学講師(障害者歯科学講座)
2000年 松本歯科大学助教授
2007年 松本歯科大学教授(特殊診療科)
2008年 松本歯科大学教授(障害者歯科学講座)
2019年 広島大学客員教授
2021年 松本歯科大学退職
2022年4月 よこすな歯科クリニック開業(静岡市清水区)
日本歯科専門医機構にて総合歯科専門医(仮称)の制度構築のために準備が進められています。総合歯科専門医は、ご存じの通り日本老年歯科医学会、日本有病者歯科医療学会、日本障害者歯科学会の3学会の領域を専門的に担う歯科の専門医となります。障害者歯科の立場で総合歯科専門医(仮称)についてご説明申し上げます。
 障害のある人の歯科受診行動として診療所に入らない、診療室に入らない、診療台に座らない、口を開けない、歯面清掃ができないことがみられます。そのような障害のある子どもの親御さんは、診てくれる歯科医院がわからない、治療してくれる歯科医院を探したことがあるなど、未だに地域で困っています。
 自閉スペクトラム症や知的能力障害を含む精神疾患は見えない障害です。彼らは理解できない、コミュニケーションがとりにくい、我慢できないなどの特性がありますが、それが障害ですので、その特性をなくすことはできません。つまり歯科医療スタッフが彼等の障害を知り、理解することが必要となり、歯科治療時に我慢させない対応が我々に求められます。30歳代で多数の欠損歯がある人、多数の残恨を有する人は、障害のある人では珍しくありません。特に歯科治療が困難な大臼歯が喪失している人や未処置のままの状態の人がいます。障害者権利条約で「保健サービスを、障害者自身が属する地域社会の可能な限り近くにおいて提供すること」と示されています。障害のある子どもの保護者がかかりつけ歯科医師へ望むことは、➀家から近い、②障害者歯科をやっている、③障害に理解がある、④無理やりの治療を避けて欲しいということです(安東、2007)。多くの総合歯科専門医(仮称)の輩出が障害のある人の歯を守っていくことにつながると考えています。先生達の障害のある人を診るという心と専門的な知識と対応がポイントとなります。
 今回は、総合歯科専門医(仮称)の研修内容、総合歯科専門医(仮称)としての実際の対応としてできることと役割について説明させて頂きます。そのうえで皆さんと一緒に総合歯科専門医(仮称)のあり方をともに考えたいと思っています。