講演情報

[SY4-1]口腔の課題に対応する上で役立つ介護報酬の最新基礎知識

○秋野 憲一1 (1. 札幌市保健福祉局 歯科保健担当部長)
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【略歴】
1998年 北海道大学歯学部卒
1998年 北海道大学歯学部付属病院
1999年 北海道渡島保健所
2000年 国立公衆衛生院専門課程分割前期課程修了
2003年 北海道保健福祉部地域保健課 主任技師
2009年 北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了(博士(歯学)取得)
2010年 北海道保健福祉部高齢者保健福祉課 主任技師
2015年 厚生労働省老健局老人保健課 医療介護連携技術推進官
2016年 厚生労働省医政局歯科保健課歯科口腔保健推進室 室長補佐 兼任
2016年 厚生労働省老健局診療報酬介護報酬同時改定準備室 兼任
2017年 札幌市保健福祉局保健所 母子保健・歯科保健担当部長
2021年 札幌市保健福祉局コロナ対策室 宿泊療養・在宅医療担当部長 兼任
2024年 札幌市保健福祉局 歯科保健担当部長
要介護高齢者における口腔の課題は、誤嚥性肺炎の予防、摂食機能の維持向上、う蝕や歯周病等の歯科疾患の予防と治療、義歯の管理と治療など多岐にわたり、歯科医師、歯科衛生士に求められる役割が大きいことは述べるまでもないだろう。
 また、要介護高齢者が、いつまでも美味しく、かつ安全に食事ができる環境を整えることは、歯科専門職のみならず、医療介護サービスに携わる全ての医療専門職及び介護専門職にとっても極めて重要である。
 厚生労働省においても、要介護高齢者に対する口腔管理の重要性を踏まえ、介護報酬に口腔関連の加算等の充実を図ってきた。
 介護保険制度創設時には、口腔関連の介護報酬は、歯科医師及び歯科衛生士による「居宅療養管理指導」たった一つであったが、通所サービス利用者を対象とした「口腔機能向上加算」、介護保険施設入所者を対象とした「口腔衛生管理体制加算」、歯科衛生士による専門的な口腔衛生管理を評価する「口腔衛生管理加算」、「経口移行加算及び経口維持加算」における歯科医師、歯科衛生士の参画の評価、さらに通所サービス及び居宅サービス利用者を対象とする「口腔・栄養スクリーニング加算」が順次、導入され、そして、直近の介護報酬では、訪問介護・短期入所利用者を対象とする「口腔連携強化加算」が新規導入された。
 さらに、前回の介護報酬改定では、リハビリテーション、口腔、栄養の取組が一体的に運用されることで、摂食嚥下障害の改善や誤嚥性肺炎予防がより効果的に進められることから、医師、歯科医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士等の多職種が連携した口腔・栄養・リハビリの一体的な取組が求められることとなった。具体的には、口腔・栄養・リハビリの一体的なアセスメントや取組を行った場合の評価として、「リハビリテーションマネジメント加算」や「リハビリテーションマネジメント計画書情報加算」等に新たな算定要件が追加されている。
 このように口腔関連の介護報酬は改定ごとに増加し、充実してきていることは大変喜ばしいことであるものの、歯科医療専門職にとっては、不慣れな介護報酬がますます複雑化し理解が難しいといった声がある他、医療介護職にとっても、もともと口腔の課題に不慣れである中、これらの口腔関連の介護報酬をどのように有効に活用したらよいのかといった声がある。
 本シンポジウムにおいては、要介護高齢者の歯科診療に従事する歯科医師や介護保険施設の協力歯科医師が最低限、抑えておくべき介護報酬の基礎知識、そして、口腔の課題に対応されている全ての医療専門職及び介護専門職に必要な口腔関連の基礎知識について、ポイントを絞って解説し、明日からの歯科診療及び介護現場におけるサービスに役立てもらえるよう最新情報も含め報告を行いたい。