講演情報

[SY6-1]歯科におけるオンライン診療の現状と用語について

○田代 宗嗣1 (1. 千葉県立保健医療大学 健康科学部 歯科衛生学科)
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【略歴】
2011年3月 東北大学歯学部卒業
2012年3月 Uクリニック五十嵐歯科 歯科医師臨床研修修了
2016年3月 東京歯科大学 大学院歯学研究科(口腔健康科学専攻)修了
2016年4月 東京歯科大学 社会歯科学講座 助教
2021年4月 東京歯科大学 社会歯科学講座 講師
2022年4月 厚生労働省 医政局歯科保健課 課長補佐
2023年9月 厚生労働省 保険局医療課 歯科医療専門官
2024年4月 東京歯科大学 社会歯科学講座 講師
2025年4月 千葉県立保健医療大学 健康科学部 歯科衛生学科 教授
医療・健康サービス向上の一環として受診機会の促進に資するものとして、情報通信機器を用いた診療(以下、オンライン診療)がある。しかし、歯科医療では処置を伴うことが多いということもあり、オンライン診療はあまり普及が進んでこなかった。
 新型コロナウイルス感染症の拡大に際し、医療機関の受診が困難になりつつあったことから、「歯科診療における新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月24日付け厚生労働省医政局歯科保健課、医薬・生活衛生局総務課事務連絡)が発出され、時限的・特例的な対応として、電話や情報通信機器を用いた歯科におけるオンライン診療が可能である旨が示された。しかし、その適切な実施に関する考え方はそれまで示されていなかった。そこで、令和3年11月に厚生労働省において、「ICTを活用した歯科診療等に関する検討会」が設置され、歯科におけるオンライン診療の適切な実施に関する考え方について議論が行われた。令和6年3月には厚生労働省より「歯科におけるオンライン診療の適切な実施に関する指針」が策定され、用語の定義や実施に関する考え方等が示された。
 これらを踏まえ、定期的な経過観察や口腔機能の状態確認等、口腔の管理が必要な場合について、直接の対面診療の一部をオンライン診療に代替する例が示され、日本歯科医学界からも「歯科におけるオンライン診療に関する基本的な考え方」が示された。併せて、直近の令和6年度診療報酬改定においては、歯科におけるオンライン診療に関する項目が新設されたところである。以前は、歯科医療は処置が主とされていたが、管理・予防が重視されるようになって久しい。国民の健康な生活の確保のため、歯科におけるオンライン診療を適切に活用し、社会の変化等にも合わせながら、発展させていくべきと考える。今回のシンポジウムを通して、どのように活用し、発展させていくのかを、皆様とディスカッションできれば幸いである。
 また、社会構造、疾病構造の変化により、医療のあり方も変化が求められる時代、用語の動向を見守ることは重要と考える。業に関する用語の定義を行うということは、歯科医師が行う範囲、歯科衛生士が関われる範囲等を定義することであり、それを理解せずに行うと、医師法、歯科医師法等の法令に抵触してしまう可能性がある。学術用語委員会シンポジウムとしては、最新情報を提供するとともに、用語の重要性も再認識して頂ければと考える。