講演情報
[優秀P衛生-5]「食」に関わる歯科衛生士の役割~若年性パーキンソン病患者の症例を通して~
○荒屋 千明1、中尾 幸恵1,2、蛭牟田 誠1、森田 達1、近石 壮登1、谷口 裕重2 (1. 医療法人社団登豊会 近石病院歯科・口腔外科、2. 朝日大学歯学部 摂食嚥下リハビリテーション学分野)
【緒言・目的】
近年の高齢化の進展に伴い,通院困難な患者や要介護者への訪問歯科診療のニーズは高まっており,訪問歯科衛生士の役割は多様化している。しかし,訪問歯科診療で「食支援」を実施できている歯科診療所は全国でもまだ少ないのが現状である。今回、訪問歯科診療において,歯科医師による歯科治療と歯科衛生士による摂食嚥下リハビリテーションを継続し,多職種と連携して食支援を行うことで,患者の希望である食事摂取が可能となった症例を経験したため報告する。
【症例および経過】
54歳女性。31歳で若年性パーキンソン病を発症。2020年10月,右被殻出血を発症した。その時点でADLは全介助,栄養は胃瘻からの経腸栄養であった。多職種が介入する中,翌年2月,患者と家族から「義歯を作ってほしい,口から食べたい」との訴えがあり,当院の訪問歯科が介入することとなった。初診から1週間後,VEを実施し,咀嚼期・口腔期障害を認めた。旧義歯があったが,口唇の緊張が強く残存歯が舌側傾斜しており,装着困難であった。そこで,歯科医師が残存歯に配慮した訓練用義歯を新製し,歯科衛生士は口腔管理と,口腔期の送り込み不良に対する舌の筋力増強訓練と可動域拡大訓練を中心とした間接訓練を実施した。義歯完成後は,「食べるための口」を作ることを目的に,訓練用義歯を使用した咀嚼訓練および直接訓練を開始した。STや管理栄養士と情報共有しながら訓練回数を増やすことにより,段階的に経口摂取を進め,嚥下調整食コード4の経口摂取が可能となった。現在は週2回昼食時にST介助による経口摂取を継続している。また,食支援の一環として外食イベントにも参加し,外食(嚥下調整食)も実現することができ,現在に至るまで誤嚥性肺炎は発症していない。
なお,本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は,訪問歯科衛生士が歯科医師および多職種と連携し,十分な情報共有を行ったことで,より効率的な摂食嚥下リハビリテーションを継続出来たと考えられる。摂食嚥下機能が改善したことにより,患者の「口から食べたい」という主訴を叶え,QOLの向上に寄与したと考える。訪問歯科衛生士は,従来の口腔衛生管理のみならず,患者の主訴を叶えるためには「食支援」への介入が重要であることが示唆された。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
近年の高齢化の進展に伴い,通院困難な患者や要介護者への訪問歯科診療のニーズは高まっており,訪問歯科衛生士の役割は多様化している。しかし,訪問歯科診療で「食支援」を実施できている歯科診療所は全国でもまだ少ないのが現状である。今回、訪問歯科診療において,歯科医師による歯科治療と歯科衛生士による摂食嚥下リハビリテーションを継続し,多職種と連携して食支援を行うことで,患者の希望である食事摂取が可能となった症例を経験したため報告する。
【症例および経過】
54歳女性。31歳で若年性パーキンソン病を発症。2020年10月,右被殻出血を発症した。その時点でADLは全介助,栄養は胃瘻からの経腸栄養であった。多職種が介入する中,翌年2月,患者と家族から「義歯を作ってほしい,口から食べたい」との訴えがあり,当院の訪問歯科が介入することとなった。初診から1週間後,VEを実施し,咀嚼期・口腔期障害を認めた。旧義歯があったが,口唇の緊張が強く残存歯が舌側傾斜しており,装着困難であった。そこで,歯科医師が残存歯に配慮した訓練用義歯を新製し,歯科衛生士は口腔管理と,口腔期の送り込み不良に対する舌の筋力増強訓練と可動域拡大訓練を中心とした間接訓練を実施した。義歯完成後は,「食べるための口」を作ることを目的に,訓練用義歯を使用した咀嚼訓練および直接訓練を開始した。STや管理栄養士と情報共有しながら訓練回数を増やすことにより,段階的に経口摂取を進め,嚥下調整食コード4の経口摂取が可能となった。現在は週2回昼食時にST介助による経口摂取を継続している。また,食支援の一環として外食イベントにも参加し,外食(嚥下調整食)も実現することができ,現在に至るまで誤嚥性肺炎は発症していない。
なお,本報告の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は,訪問歯科衛生士が歯科医師および多職種と連携し,十分な情報共有を行ったことで,より効率的な摂食嚥下リハビリテーションを継続出来たと考えられる。摂食嚥下機能が改善したことにより,患者の「口から食べたい」という主訴を叶え,QOLの向上に寄与したと考える。訪問歯科衛生士は,従来の口腔衛生管理のみならず,患者の主訴を叶えるためには「食支援」への介入が重要であることが示唆された。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)