講演情報

[優秀P地域-1]高齢者施設におけるOral Health Assessment Toolを活用した口腔管理とスタッフへの口腔教育

○正國 光一1、砂坂 ちさと1、迫田 敏1、松尾 浩一郎2 (1. 医療法人篤志会さこだ歯科、2. 東京科学大学 大学院 地域・福祉口腔機能管理学分野)
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【目的】
 近年,高齢者施設における口腔管理の重要性は増しているが,多くの施設では介護士や看護師の業務が多忙であり,口腔ケアが後回しにされる傾向がある。今回われわれは,協力施設である介護老人保健施設において,Oral Health Assessment Tool(OHAT)を導入し,口腔内の状態を点数化することで,施設スタッフの口腔ケアへの意識への影響を検証した。
【方法】
 当院と連携する介護老人保健施設において,2023年10月にOHATによる口腔内評価を導入し,2023年11月から2024年12月まで,施設入所者70名の口腔衛生管理状態の変化を後ろ向きに検討した。OHATの導入にあたり,2023年8月にOHAT評価方法および口腔ケア手技に関する講習会を実施し,2023年10月から施設介護士が週1回,入所者全員の口腔評価をOHATを用いて行った。また,OHAT導入と同時に,OHATスコアのすり合わせおよび口腔ケア技術の指導を目的として,月1回の口腔ケア回診を実施した。OHAT導入から現在に至るまでのスコアの経時的変化を調査するため,月ごとのOHATスコアを集計し,合計点の平均を算出した。また,OHAT評価の再現性を検討するため,当院で評価したOHATスコアと施設介護士による評価結果の一致率を調査した。なお,当院では歯科介入のある入所者に対し,月1回OHAT評価を行い,それに基づいて月ごとの一致率を評価した。
【結果と考察】
 OHAT導入後,施設全体のOHATスコアは,導入当初の2023年11月では,70名において,平均2.0±2.0であったが, 2024年12月では,61名において平均1.9±1.5と同様の数字であった。一方,当院で評価した入所者に限定すると,OHATスコアは5.0±1.8から3.6±1.7に低下していた。さらに,当院で評価したOHATスコアと施設側で評価したOHATスコアの一致率は2023年11月では,54.5%と低かった。そのため,講習会や一致率が低かった項目についてのすり合わせを行った。2024年12月では一致率は62.5%となった。以上の結果より,OHATの導入により,施設スタッフの口腔内への関心は高まったものの,評価の再現性には課題が残った。一方,歯科医療者が口腔管理を行うことで口腔環境が改善することが示唆された。今後も講習会や口腔ケア回診におけるフィードバックを継続的に実施する必要があると考えられた。
( COI 開示:なし)
(日本障害者歯科学会 倫理審査委員会承認番号 24022)