講演情報
[優秀P地域-2]被災高齢者の食生活と口腔機能の改善に向けた地域歯科保健活動 ~ 令和6年能登半島地震による仮設住宅での災害口腔支援 ~
○長谷 剛志1、小山 岳海1、小林 一彦1 (1. 公立能登総合病院 歯科口腔外科)
【目的】
令和6年能登半島地震によって住居を失い、新たなコミュニティとして仮設住宅での生活を余儀なくされる被災高齢者は多い。住み慣れた環境の変化によって食生活にも影響がみられ、簡素な食事によるQOLの低下が懸念される一方、オーラルフレイルへの対応も急務となっている。放置すれば、口腔機能の低下はおろか、栄養障害、疲労やストレスから災害関連死の誘因となることも危惧される。
【方法】
能登地域の多職種で構成されるボランティア食支援団体「食力の会」では、2024年6月16日から仮設住宅を巡回し、被災高齢者の食事相談会を継続している。2024年11月4日までの約5ヵ月間において被災高齢者163人のうち144人(88%)は、仮設住宅での食生活に不自由を感じていた。そのうち同意の得られた67人(男性20人女性47人:平均年齢72.3歳)を被検者として「かむかむチェックシート」を用いて普段の食事内容をスクリーニングした後、BMI、握力、オーラルフレイル(OF-5)について調査し、さらに、口腔機能の指標として咬合力、最大舌圧、口腔粘膜湿潤度を評価した。
【結果と考察】
「半年前(震災前)と比べて、固いものを食べるのが難しくなった」と回答した人が67人中26人(38.8%)存在し、咬合力の平均は260.5Nであった。さらに、26人中17人(65.4%)は、普段の食事が咀嚼回数20回以下の単調な食品に偏在しており、咬合力の平均は226.6Nと低下していた。通常、問題なく食品を咀嚼するには375N以上の咬合力が必要であると報告されており、低咀嚼で単調な食生活を送っている被災高齢者は基準値に比して約150Nも低値を示した。また、当該17人(65.4%)については最大舌圧や口腔粘膜湿潤度も基準値より低下しており、最大舌圧の平均は29±9kPa、口腔粘膜湿潤度は24.5±6であった。一方、潜在的に普段の食事が簡素化している被災高齢者は口腔機能のみならず、BMIや握力も低下しており、心理的満足も少なく活動性の低下につながっていた。本調査より、仮設住宅で暮らす被災高齢者における食生活の改善と口腔機能の維持・向上は震災後の心身の健康に寄与し、災害関連死の予防にも大きく貢献すると考えられ、今後も継続する必要がある。(COI 開示:なし) (公立能登総合病院倫理審査委員会承認番号 R0514)
令和6年能登半島地震によって住居を失い、新たなコミュニティとして仮設住宅での生活を余儀なくされる被災高齢者は多い。住み慣れた環境の変化によって食生活にも影響がみられ、簡素な食事によるQOLの低下が懸念される一方、オーラルフレイルへの対応も急務となっている。放置すれば、口腔機能の低下はおろか、栄養障害、疲労やストレスから災害関連死の誘因となることも危惧される。
【方法】
能登地域の多職種で構成されるボランティア食支援団体「食力の会」では、2024年6月16日から仮設住宅を巡回し、被災高齢者の食事相談会を継続している。2024年11月4日までの約5ヵ月間において被災高齢者163人のうち144人(88%)は、仮設住宅での食生活に不自由を感じていた。そのうち同意の得られた67人(男性20人女性47人:平均年齢72.3歳)を被検者として「かむかむチェックシート」を用いて普段の食事内容をスクリーニングした後、BMI、握力、オーラルフレイル(OF-5)について調査し、さらに、口腔機能の指標として咬合力、最大舌圧、口腔粘膜湿潤度を評価した。
【結果と考察】
「半年前(震災前)と比べて、固いものを食べるのが難しくなった」と回答した人が67人中26人(38.8%)存在し、咬合力の平均は260.5Nであった。さらに、26人中17人(65.4%)は、普段の食事が咀嚼回数20回以下の単調な食品に偏在しており、咬合力の平均は226.6Nと低下していた。通常、問題なく食品を咀嚼するには375N以上の咬合力が必要であると報告されており、低咀嚼で単調な食生活を送っている被災高齢者は基準値に比して約150Nも低値を示した。また、当該17人(65.4%)については最大舌圧や口腔粘膜湿潤度も基準値より低下しており、最大舌圧の平均は29±9kPa、口腔粘膜湿潤度は24.5±6であった。一方、潜在的に普段の食事が簡素化している被災高齢者は口腔機能のみならず、BMIや握力も低下しており、心理的満足も少なく活動性の低下につながっていた。本調査より、仮設住宅で暮らす被災高齢者における食生活の改善と口腔機能の維持・向上は震災後の心身の健康に寄与し、災害関連死の予防にも大きく貢献すると考えられ、今後も継続する必要がある。(COI 開示:なし) (公立能登総合病院倫理審査委員会承認番号 R0514)