講演情報

[優秀P地域-4]地域歯科医師会要介護高齢者診療所におけるインシデントの検討

○間宮 秀樹1、堀本 進1、太田 桃子1、小林 利也1、小野 洋一1、菊地 幸信1、秋元 宏恵1、西尾 純平1、似鳥 純子1、日吉 美保1、矢ケ﨑 和美1、棚橋 亜企子1、石田 彩1、若尾 美知代1、杉山 美帆1 (1. 藤沢市歯科医師会)
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[目的]
 日本医療機能調査機構の歯科ヒヤリ・ハット事例収集等事業への登録が施設基準の取得条件となり,インシデントレポート(以下,IR)の普及は加速すると考えられる。藤沢市歯科医師会南部要介護高齢者診療部門では年間約500症例の診療を行い,終了後のミーティングでその日のインシデントを報告し,その内容を非番のスタッフを含めた全員にメール配信して情報共有している。今回,過去3年間のインシデントを集計して検討した。
[方法]
 令和4年1月から令和6年12月末までの3年間に報告されたIRについて,数,発生場所(診療関係,器材・薬剤関係,受付関係,それ以外),内容,影響度レベル,原因,対策について調査した。
[結果と考察]
 インシデントの総数は38件で,発生場所は診療関係と器材・薬剤関係がそれぞれ14件,受付関係が8件,それ以外が2件であった。診療関係のインシデントの中では「器具の落下」が8件ともっとも多く,特に超音波ブラシのチップ落下が多かった。落下物はすべて回収されており誤飲誤嚥はなかった。影響度レベル3a以上のアクシデントはなかったが,患者の容態急変時の酸素投与が遅れた事例(最終的に酸素投与は必要なかった)があり,早急な対応が必要な例もみられた。発生原因はslipsとmistakeが多かった。器材・薬剤関係では機器の不調が8件,誤操作等が4件あり,原因はslipsが多かった。投薬時の個数間違いといった影響度レベルが高くなる可能性があるものもみられた。受付関係では,「予約間違い」が6件でもっとも多く、再発がみられた。原因としてslipsがもっとも多かった。今回,患者の基礎疾患や認知症に関係するインシデントはなかった。同一施設で運用している障害者診療部門のIRでは,「患者体動による軟組織損傷」のような障害に関係したインシデントが多く,この点が両者の違いと考えられた。予備力の少ない高齢者患者では影響度レベルの高いインシデントは生命予後に直結する可能性があるため,IRの検討と対策はきわめて重要である。今回,影響度レベルの高いインシデントはなく,当診療所の安全管理はおおむね妥当と考えられたが,同一インシデントの再発も散見されたため,さらなる対策の検討が必要と考えられた。
[参考文献]
 間宮秀樹、他:地域歯科医師会障害者診療所におけるインシデントの検討,第40回日本障害者歯科学会抄録集,170,2023。
(COI開示:なし)
(藤沢市歯科医師会倫理委員会承認番号2024-006)