講演情報

[優秀P一般-2]総抗コリン薬負荷と摂食嚥下機能との関連

○美濃和 秀幸1,3、佐藤 路子1,2、田中 公美1,2、加藤 陽子1,2、田村 文誉1,2、菊谷 武1,2 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科、3. JA長野厚生連佐久総合病院)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 ポリファーマシーは高齢者において薬物有害事象を増加する重要な課題である。特に,多剤併用による抗コリン性有害事象の一つとして高齢者の嚥下機能低下が報告されている。抗コリン作用を有する薬剤の服用による影響を総抗コリン薬負荷として評価し,摂食嚥下機能との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 2022年8月から2024年9月までに,某クリニックで診療を開始した65歳以上の外来患者188名(男性114名,女性74名,平均年齢80.4±7.3歳)を対象とした。調査項目は基礎疾患,服薬状況,舌圧やオーラルディアドコキネシス(ODK)などの口腔機能検査などを診療録より調査した。嚥下機能は嚥下造影検査でのPenetration-Aspiration Scale (PAS)により,摂食状況はFood Intake Level Scale(FILS)により評価した。服薬状況から「日本版抗コリン薬リスクスケール」を用いて総抗コリン薬負荷を算出した。さらに,対象者を摂食嚥下機能に強く影響を及ぼす疾患(脳血管疾患,進行性神経筋疾患,頭頸部腫瘍)の有無に基づき,「疾患あり群」と「疾患なし群」に分け,抗コリン薬・抗コリン作用薬と摂食嚥下機能との関連をχ²検定,Kruskal-wallis検定,重回帰分析で検討した。
【結果と考察】 
 対象者の平均総抗コリン薬負荷は1.2±1.4であり,2以上の高負荷群は52名(30.6%)存在した。総抗コリン薬負荷はFILSと有意な関連を示し,特に疾患なし群では年齢調整後もこの関連が認められた。2以上の高負荷群においてODK /ka/が有意に低値を示した。以上の結果から,年齢に関係なく総抗コリン薬負荷が高い場合,摂食状況は低下し,舌の巧緻性が低下することが明らかになった。特に,嚥下に影響を及ぼす疾患のない群で顕著であった。この結果は,総抗コリン薬負荷が摂食状況や舌の巧緻性に影響を与える可能性を示唆している。摂食嚥下リハビリテーションの臨床において抗コリン薬の影響を考慮することが重要であると言える。
(COI開示:なし)
(日本歯科大学 倫理審査委員会承認番号NDU-T2024-33)