講演情報

[優秀P一般-5]摂食嚥下障害患者における口腔機能低下症と下位項目の測定可否に関する実態調査

○田中 公美1,2、菊谷 武1,2、佐藤 路子1,2、加藤 陽子1,2、美濃和 秀幸1、坂詰 智仁1,2、仲澤 裕次郎1,2、礒田 友子1,2、戸原 雄1,2、高橋 賢晃1,2、田村 文誉1,2 (1. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、2. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科)
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【目的】 
 口腔機能低下症は、放置しておくと咀嚼障害、摂食嚥下障害などを引き起こすと推測される。適切な口腔管理の提供には、口腔機能検査が必要不可欠であるが、生活機能の低下により、測定が困難なケースも存在する。そこで、本研究では、摂食嚥下障害患者における原疾患別、摂食機能別の口腔機能低下の実態と下位項目の測定可否を明らかにすることを目的とした。
【方法】
 対象は、摂食嚥下障害を主訴に外来受診した65歳以上の高齢者である。調査項目は、原疾患等の基礎情報、口腔機能精密検査を含めた口腔状態、摂食機能、生活機能とした。原疾患は、摂食機能療法の適応となる脳血管疾患・口腔癌患者と、他疾患患者の2群に分類した。摂食機能は、Food Intake LEVEL Scale(FILS)で評価した。原疾患、摂食機能別の口腔機能低下の実態、下位項目の測定可否との関連性をχ2乗検定、Kruskal-Wallis 検定で解析した。
【結果と考察】
 口腔機能低下症の下位項目を1項目以上測定可能であったのは146名(男性92名、女性54名、平均年齢80.1歳±7.5歳)であった。全項目測定可能は96名(65.8%)、3-6項目測定可能が39名(26.7%)、2項目測定可能が11名(7.5%)であった。下位項目の低下該当者は、口腔衛生状態不良が25名、口腔乾燥が61名、咬合力低下が84名、舌口唇運動機能低下が106名、低舌圧が105名、咀嚼機能低下が26名、嚥下機能低下が36名であり、各下位項目で測定不可能者が存在し、咀嚼機能は37名(25.3%)、嚥下機能は52名(35.6%)が測定不可能であった。特に、FILSの低値者ほど、嚥下機能以外の下位項目で測定不可能者の割合が有意に高かった。脳血管疾患・口腔癌患者と、他疾患患者の検討では、他疾患患者が有意に嚥下機能低下を示す点数が高かったが、他の下位項目、ならびに低下該当数は、有意な差異を認めなかった。
 本研究の結果より、摂食嚥下障害を有する外来患者において、約3割が口腔機能低下症の下位項目を完遂しなかった。測定不可能者は、機能低下が見込まれるため、評価法の代替や変更の必要性が示唆された。また、脳血管疾患・口腔癌の既往が無い者においても摂食嚥下障害の自覚と口腔機能低下を認め、対応の必要性が示された。(COI 開示:なし)(日本歯科大学倫理審査委員会承認番号NDU-T2024-33)