講演情報
[CL]歯が良い人は丈夫で長生きであることを科学する
○池邉 一典1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座)

【略歴】
1987年 大阪大学歯学部卒業
1991年 大阪大学大学院歯学研究科修了
1998年 大阪大学歯学部附属病院咀嚼補綴科 講師
1999年 文部省在外研究員としてUniversity of Iowa (USA)にて研究に従事
2015年 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 准教授
2015年 IADR Distinguished Scientist Award for Geriatric Oral Research
2018年 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 教授
2023年 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座(講座名称変更)教授
1987年 大阪大学歯学部卒業
1991年 大阪大学大学院歯学研究科修了
1998年 大阪大学歯学部附属病院咀嚼補綴科 講師
1999年 文部省在外研究員としてUniversity of Iowa (USA)にて研究に従事
2015年 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 准教授
2015年 IADR Distinguished Scientist Award for Geriatric Oral Research
2018年 大阪大学大学院歯学研究科 顎口腔機能再建学講座 教授
2023年 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座(講座名称変更)教授
私はこれまで30年間、「歯が良い人は丈夫で長生きである」ことを科学的根拠に基づき明らかにすることをテーマに研究を行ってきた。
2000年代には、歯の欠損や義歯不適合のみならず、運動機能や感覚機能の低下によって咀嚼機能が低下し、歯があっても食べることが困難な高齢者がいることを明らかにした。これらの知見は、その後のオーラルフレイルや口腔機能低下症の概念につながっている。また、咀嚼機能が日常の摂取食品や栄養状態、さらには全身疾患やQOLと関連することも明らかにしてきた。一方で、歯科単独の研究には限界があることも認識した。
そこで2010年より、大阪大学の他研究科の同世代の仲間と一緒に健康長寿の要因を探索する大規模疫学研究(SONIC研究)を開始した。本研究は、老年心理学・社会学(人間科学研究科),老年内科学・看護学(医学系研究科)と,我々歯科補綴学・歯周病学(歯学研究科)による文理融合型の学際研究である。70歳約1000名、80歳約1000名、90歳約900名の地域住民を対象に、3年ごとの縦断調査を継続しており、遺伝素因から社会経済的要因、生活習慣、栄養、健康状態、生活習慣病、幸福感、死生観まで多面的に評価している。
その結果、咬合力が高い者ほど野菜・魚・肉類の摂取量が多く、ビタミン、食物繊維、たんぱく質の摂取が充足していることを明らかにした。さらに、臼歯部咬合支持が維持されている者では、種々の交絡因子を調整後も動脈硬化が少なく、長期的にも歩行速度や認知機能の低下が抑制されることが示され、咬合支持が健康長寿の基盤であることが確認された。
さらに2022年からはリアルワールドデータ解析(OHSAKA study)に参画し、大阪府の後期高齢者約30万人の医科・歯科健診、医療および介護レセプトデータを統合し解析した。その結果、歯数が多い者ほど死亡および要介護の発生率が低く、医療費・介護費も少ないことを示した。
これらの知見は、「歯を残し、咀嚼機能を維持すること」が健康長寿の実現のみならず、介護予防や医療・介護費の抑制にも寄与することを示している。咀嚼機能の意義は「たべるよろこび」にとどまらず、全身の健康と幸福を支える基盤である。
すでに「歯が良い人は丈夫で長生きである」ことには十分な科学的根拠が蓄積されている。今後は、歯科医療従事者一人ひとりが、患者、他職種、行政、そして一般市民に対し、口腔と全身の健康の関連および高齢社会における歯科医療の重要性を、エビデンスに基づいて発信していくことが求められる。
2000年代には、歯の欠損や義歯不適合のみならず、運動機能や感覚機能の低下によって咀嚼機能が低下し、歯があっても食べることが困難な高齢者がいることを明らかにした。これらの知見は、その後のオーラルフレイルや口腔機能低下症の概念につながっている。また、咀嚼機能が日常の摂取食品や栄養状態、さらには全身疾患やQOLと関連することも明らかにしてきた。一方で、歯科単独の研究には限界があることも認識した。
そこで2010年より、大阪大学の他研究科の同世代の仲間と一緒に健康長寿の要因を探索する大規模疫学研究(SONIC研究)を開始した。本研究は、老年心理学・社会学(人間科学研究科),老年内科学・看護学(医学系研究科)と,我々歯科補綴学・歯周病学(歯学研究科)による文理融合型の学際研究である。70歳約1000名、80歳約1000名、90歳約900名の地域住民を対象に、3年ごとの縦断調査を継続しており、遺伝素因から社会経済的要因、生活習慣、栄養、健康状態、生活習慣病、幸福感、死生観まで多面的に評価している。
その結果、咬合力が高い者ほど野菜・魚・肉類の摂取量が多く、ビタミン、食物繊維、たんぱく質の摂取が充足していることを明らかにした。さらに、臼歯部咬合支持が維持されている者では、種々の交絡因子を調整後も動脈硬化が少なく、長期的にも歩行速度や認知機能の低下が抑制されることが示され、咬合支持が健康長寿の基盤であることが確認された。
さらに2022年からはリアルワールドデータ解析(OHSAKA study)に参画し、大阪府の後期高齢者約30万人の医科・歯科健診、医療および介護レセプトデータを統合し解析した。その結果、歯数が多い者ほど死亡および要介護の発生率が低く、医療費・介護費も少ないことを示した。
これらの知見は、「歯を残し、咀嚼機能を維持すること」が健康長寿の実現のみならず、介護予防や医療・介護費の抑制にも寄与することを示している。咀嚼機能の意義は「たべるよろこび」にとどまらず、全身の健康と幸福を支える基盤である。
すでに「歯が良い人は丈夫で長生きである」ことには十分な科学的根拠が蓄積されている。今後は、歯科医療従事者一人ひとりが、患者、他職種、行政、そして一般市民に対し、口腔と全身の健康の関連および高齢社会における歯科医療の重要性を、エビデンスに基づいて発信していくことが求められる。
