講演情報
[認定P-3]聴覚障害を有する口腔機能低下症患者への口腔機能訓練効果
○森 裕太郎1、中山 渕利1 (1. 日本大学歯学部摂食機能療法学講座)
【緒言・目的】
口腔機能低下症は,加齢に伴う全身的変化や生活様式の影響を受けて多面的に進行することが知られており,その評価と適切な介入の重要性は超高齢社会の進展とともに一層高まっている。特に聴覚障害を有する患者では,会話による情報伝達が制限されるため,口頭での説明が十分に届かず,指導内容の誤解や訓練の継続困難につながりやすいという課題がある。そのため,患者個々の理解様式に合わせたコミュニケーション手段を用い,継続可能な訓練計画を立案することが重要となる。本症例では,口腔機能の低下を主訴に来院した難聴患者に対し,初診から4年間の経過を追跡した。初期に低下していた複数の口腔機能項目が改善後も安定して維持されており,その介入内容とフォローアップから得られた知見について報告する。
【症例および経過】
69歳男性。飲水時および食事時のむせが徐々に増加し,不安を感じるようになったことをきっかけに受診した。初診時に実施した口腔機能精密検査では,TCI83.3%,口腔乾燥29.7,咬合力27歯,舌口唇運動機能pa5.4回,ta5.5回,ka5.2回,舌圧43.2kPa,咀嚼力237mg/dL,EAT10:8点より口腔機能低下症と診断した。外来では舌運動の協調性と筋力向上トレーニングに加え,頬粘膜や口唇の運動訓練も組み合わせて実施した。聴覚障害への配慮として筆談を中心に説明し,訓練内容や改善状況は図示して提示することで理解を補助した。40病日でむせが減少,74病日には初診時に低下していた3項目が改善した。その後も通院を継続し,加齢による一般的な変化はみられるものの,舌口唇運動機能および嚥下機能は改善後の状態を維持している。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では,聴覚障害に伴う対人コミュニケーションの困難さが訓練への不安や消極性に影響していた可能性が考えられる。しかし,筆談や視覚的フィードバックなど,患者の理解しやすい方法を選択し続けたことにより,訓練が日常的に習慣化し患者自身のモチベーションが向上した結果が機能維持につながったと考えられる。聴覚障害等の身体障害を有する口腔機能低下症患者において,個々の特性に応じた指導方法の工夫は,長期管理における極めて重要な要素であることが示唆された。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
口腔機能低下症は,加齢に伴う全身的変化や生活様式の影響を受けて多面的に進行することが知られており,その評価と適切な介入の重要性は超高齢社会の進展とともに一層高まっている。特に聴覚障害を有する患者では,会話による情報伝達が制限されるため,口頭での説明が十分に届かず,指導内容の誤解や訓練の継続困難につながりやすいという課題がある。そのため,患者個々の理解様式に合わせたコミュニケーション手段を用い,継続可能な訓練計画を立案することが重要となる。本症例では,口腔機能の低下を主訴に来院した難聴患者に対し,初診から4年間の経過を追跡した。初期に低下していた複数の口腔機能項目が改善後も安定して維持されており,その介入内容とフォローアップから得られた知見について報告する。
【症例および経過】
69歳男性。飲水時および食事時のむせが徐々に増加し,不安を感じるようになったことをきっかけに受診した。初診時に実施した口腔機能精密検査では,TCI83.3%,口腔乾燥29.7,咬合力27歯,舌口唇運動機能pa5.4回,ta5.5回,ka5.2回,舌圧43.2kPa,咀嚼力237mg/dL,EAT10:8点より口腔機能低下症と診断した。外来では舌運動の協調性と筋力向上トレーニングに加え,頬粘膜や口唇の運動訓練も組み合わせて実施した。聴覚障害への配慮として筆談を中心に説明し,訓練内容や改善状況は図示して提示することで理解を補助した。40病日でむせが減少,74病日には初診時に低下していた3項目が改善した。その後も通院を継続し,加齢による一般的な変化はみられるものの,舌口唇運動機能および嚥下機能は改善後の状態を維持している。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例では,聴覚障害に伴う対人コミュニケーションの困難さが訓練への不安や消極性に影響していた可能性が考えられる。しかし,筆談や視覚的フィードバックなど,患者の理解しやすい方法を選択し続けたことにより,訓練が日常的に習慣化し患者自身のモチベーションが向上した結果が機能維持につながったと考えられる。聴覚障害等の身体障害を有する口腔機能低下症患者において,個々の特性に応じた指導方法の工夫は,長期管理における極めて重要な要素であることが示唆された。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
