講演情報

[認定P-7]基礎疾患のあるアルツハイマー型認知症の高齢者に対し,訪問歯科診療にて義歯を新製した一症例

○下山 舞子1、平塚 正雄1,2 (1. 医療法人社団秀和会 小倉南歯科医院 、2. 医療法人社団秀和会 小倉北歯科医院)
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【緒言・目的】
 アルツハイマー型認知症患者では,口腔環境の悪化や義歯不適合が見過ごされやすく,咀嚼機能の低下を招くことがある。今回,アルツハイマー型認知症患者に心理面への配慮と全身管理による訪問歯科診療を行い,咀嚼機能と認知機能が改善した症例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 81歳,女性。アルツハイマー型認知症(FAST Level 5),高血圧,2型糖尿病,右大腿骨転子部骨折の既往あり。介護老人保健施設入所時の歯科検診で不衛生な口腔環境と義歯不適合が確認され,家族の希望により訪問歯科診療を行った。初診時のバイタルサインは血圧値:125/65mmHg,脈拍数:65bpm,SpO2:98%でBMIは19.8であった。ADLは一部介助で移動は車椅子使用,摂食嚥下機能はFOIS Level 6で3食経口摂取(1400kcal)であった。改訂長谷川式簡易知能評価は12点であった。口腔衛生状態はPCR 100%,Tongue Coating Index 61%で不良,全顎的に中等度の辺縁性歯周炎とう蝕の未処置歯を認めた。上顎部分床義歯は鉤歯の破折により維持が困難となり,下顎部分床義歯も不適合の状態であった。診療では心理面への配慮を行いながら,バイタルサインを測定し,循環動態の変動に注意した。義歯の印象採得や咬合採得の際に指示に難渋する場面も認められたが,新義歯装着への適応能力は良好であった。咀嚼機能の改善により食事時間は短縮し,歯科衛生士介入後は口腔衛生状態も改善した。改訂長谷川式簡易知能評価では22点となり,口腔機能精密検査にも協力性が得られるようになった。新義歯装着後は車椅子を自走し活動性が増した。なお,本症例の発表について患者家族から文書による同意を得ている。
【考察】
 アルツハイマー型認知症患者では複数の基礎疾患を合併している症例も少なくない。本症例は不衛生な口腔環境と義歯不適合が認められ,義歯新製により咀嚼機能の改善を認めた。訪問歯科診療や施設でのリハビリテーション,生活環境の変化などが相まって活動性の増加を認め,QOL向上に寄与した可能性が考えられた。認知症のステージ進行により診療時の行動調整や全身管理の困難さが増すが,本症例では心理面への配慮により全身管理下での診療が可能であったと考えられた。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)