講演情報
[認定P-10]施設新規入所高齢者に義歯新製と摂食機能訓練を実施し口腔機能の向上を認めた症例
○渡邉 聡1、鈴木 史彦1 (1. 奥羽大学歯学部歯科補綴学講座高齢者歯科学分野)
【緒言・目的】口腔機能の低下により,患者本人が希望する食形態での摂食が困難な場合がある。今回,残存歯の動揺と臼歯部の咬合がないために咀嚼障害を有する施設新規入所者に対して,歯科訪問診療によって義歯新製と摂食機能訓練を実施し,口腔機能の改善によって患者が希望する食形態での食事を摂取できるようになった1例を経験したので報告する。 【症例および経過】87歳,女性。アルツハイマー型認知症,骨粗鬆症,第二腰椎圧迫骨折,左大腿骨骨折後保存療法の既往あり。認知症高齢者の日常生活自立度(認知症度)はⅠであった。特別養護老人ホーム入所時に,患者はより硬い食物の摂取を希望したことから,歯科訪問診療が依頼された。2025年1月の初診時口腔内所見では,上下顎前歯5歯が動揺度Ⅲ度,臼歯部は咬合なく,義歯は不使用であった。食形態は全粥と刻み食であった。口腔機能低下症の評価では,咀嚼機能低下の評価は実施できなかったものの,口腔衛生状態不良,口腔乾燥,咬合力低下,舌・口唇運動機能低下,および低舌圧の5項目が該当したため口腔機能低下症と診断した。動揺歯を抜歯後に上下顎部分床義歯を新製した。その後,隔週の頻度で義歯調整,口腔衛生管理,摂食機能訓練として舌訓練と口腔周囲筋賦活化のための頬部マッサージを継続的に実施した。更に食事前の嚥下体操等について施設職員にも指導し日常的に実施してもらった。ミールラウンドで摂食嚥下の状態を確認した上で主食を軟飯,副食を常食(一口大)へ変更した。義歯装着2か月後と6か月後の口腔機能検査では,低下が認められた5項目の向上を認めた。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。 【考察】米飯や常食を食べたいという患者本人のモチベーションが高かったことや,認知症度がⅠで指示理解が可能であったことから,治療に対する患者の協力が得られたことが,本症例において口腔機能の向上を認めた大きな要因であると考える。また,義歯新製後の継続的な口腔衛生管理と摂食機能療法に加え,施設職員による嚥下体操等が,向上した口腔機能の維持に役立ったものと考える。(COI開示:なし)(奥羽大学 倫理審査委員会承認番号:第422号)
