講演情報
[認定P-14]多疾患併存・多剤服用の糖尿病高齢者に対する医科歯科連携を通じた包括的歯科管理と治療優先順位の検討
○寺本 祐二1、渡邊 哲2 (1. 寺本歯科医院、2. 愛知学院大学歯学部口腔顎顔面外科学講座)
【緒言・目的】高齢者歯科医療では多疾患併存や多剤服用を背景とした全身管理と口腔管理の統合が不可欠である。また,高齢期でのインプラント治療は治療適応や介入時期の慎重な判断が求められる。近年,他院で既にインプラント治療を受けた患者が受診する機会も増加しており,継続的な管理とリカバリーの重要性が高まっている。今回,医科歯科連携のもと歯周治療を優先し全身状態の改善後に補綴治療を行った糖尿病合併高齢者の良好に経過している症例について報告する。【症例および経過】患者は初診時66歳の男性(現在75歳)で補綴物の脱離を主訴に来院した。既往歴は2型糖尿病を含めた9疾患と13剤を服用する多剤服用状態であった。初診時,HbA1cは7.5%,空腹時血糖は163mg/dLであり糖尿病コントロールは不良であった。口腔内は全顎的歯周炎を呈し,PPD≧4mmが78.3%,BOP 65.2%,PCR 77.2%と著しい口腔衛生不良を認めた。また,他院施行のインプラントが3本存在し,47部インプラントと45番天然歯が連結しており脱離を繰り返すなどの問題を認めた。 主治医と対診を行い,全身状態の確認と並行して歯周治療を実施した。患者は46欠損部への新規インプラント治療を希望したが,歯周治療とHbA1c改善を待ってから介入する方針を徹底した。HbA1cは6.4%まで改善し,PPDも21.0%へ減少した。全身状態の安定を確認し46部にインプラント治療を施行してからもHbA1cは6.2%と安定しメインテナンスを継続することで良好に経過している。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。【考察】本症例は多疾患併存,多剤服用を背景とした高齢患者に糖尿病と歯周病の双方向性を十分に考慮した治療戦略が奏功した。初診時の糖尿病と重度歯周炎に対して,医科歯科連携による血糖コントロールと徹底した歯周治療を優先した判断がその後の長期安定に寄与した。また,他院施行のインプラント部位が将来のトラブル因子となる可能性があるため介護移行期を見据えた継続的な歯科介入は極めて重要である。本症例のように多疾患併存高齢者においてポリファーマシーや全身状態を把握した上での「全身管理と口腔管理の統合」は今後,在宅医療や施設への入所などに移行後も口腔機能を維持するために不可欠である。(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
