講演情報

[認定P-16]薬剤関連顎骨壊死ステージ3の要介護高齢者に対し訪問診療下で, 感染症重症化の回避, 腐骨除去術を行い症状改善に至った症例

○岩男 恵理子1、藤井 航2 (1. 医療法人福和会 和泉二島予防歯科クリニック、2. 九州歯科大学歯学部歯学科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言・目的】
 薬剤関連顎骨壊死 (MRONJ) 患者で全身・精神状態, 生活背景を配慮し保存的治療で対応を開始し, 最終的には身体的負担を最小限に訪問診療下で腐骨除去術を行い, 良好な経過を得たので報告する。
【症例および経過】
 91歳, 女性。現病歴はうつ病, 2型糖尿病, MRONJ (ステージ1)の診断があった。既往歴として肺癌, 乳癌術後, 骨粗鬆症がありイバンドロン酸ナトリウム水和物の服用歴があった。2024年4月うつ病で精神科に入院後, 6月介護付有料老人ホームに入居した。同時期MRONJの症状が悪化しA病院入院下で腐骨除去術を予定するも, 患者は手術を拒否し, 施設より当院訪問診療部に対応依頼があった。
 7月初診時は左頬部腫脹, 自発痛著明, 左下大臼歯部の歯肉瘻孔より多量の排膿を認めた。A病院口腔外科医と情報共有, 在宅主治医と血糖コントロール, 看護師と緊急抗菌薬点滴依頼について協議した。抗菌薬としてクラブラン酸カリウムアモキシシリン水和物投与等で症状コントロールを図るも, 食事摂取不良で栄養評価はMNA®-SF4点に低下し, 10月には顎下部からオトガイ部下方に炎症波及を認めた。セフトリアキソン点滴静注1g/日, 4日間を訪問看護に依頼し, 患者の同意を得て居室で口腔内切開処置を行った。その後,自発痛は消失するも外歯瘻を形成した (ステージ3) 。保存的治療を継続し2025年1月に訪問診療下で腐骨除去術を実施,外歯瘻は治癒した。症状の軽快後に口腔機能評価を実施, ミキサー食を刻み食に変更し,MNA®-SF12点に改善した。今後は,病的骨折のリスクも配慮し継続したフォローを行う予定である。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 MRONJのステージ3に対しては顎骨区域切除などの外科的治療が有効で, 保存的治療のみでは治癒は期待できないとされている。しかし,要介護高齢者の複雑な全身, 精神状態から外科的治療が適応できず治療に難渋する例が訪問診療の現場では散見される。治療方針の決定は,患者の意思に寄り添いながら, 病歴や精神状態, 生活背景などにも伴走する体制が必要と考える。的確に多職種と連携し, MRONJの症状改善を図ることができた症例であった。(COI開示:なし, 倫理審査対象外)