講演情報

[認定P-17]意識障害患者の下唇咬傷に対するマウスピースの有用性

○小野沢 仁美1、飯田 貴俊2 (1. 神奈川歯科大学全身管理歯科学講座高齢者歯科学分野、2. 北海道医療大学歯学部生体機能・病態学系 摂食機能療法・加齢歯科学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言・目的】
 長期入院中の高齢者は身体機能低下に伴い口腔機能の低下をきたしやすく,口腔周囲筋のバランスが崩れると口唇咬傷を生じることがある。特に意識障害患者では咬傷による疼痛の防御反応に乏しく潰瘍を形成しやすい。本症例ではこのような意識障害下の特性に加え,誤飲リスクや介助者にも配慮しマウスピースの形態的工夫および口腔管理を行った。
【症例および経過】
 90歳男性。窒息により低酸素脳症を発症し,遷延性意識障害のため気管切開および経鼻経管栄養下で療養中であった。下唇を巻き込み強く噛みしめる状態が続き,深い咬傷と腫脹を認めたため歯科訪問診療を依頼された。残存歯は3-1┴1-6,73-1┬1-46で義歯は未使用であった。初診時,意思疎通は難しく開口保持困難および強い食いしばりを認めた。下唇内転防止を目的に,まず上下顎一体型マウスピースを作製した。意識障害により開口指示への応答および開口保持が困難であったため,印象採得時は介助者を配置した。介助者が下顎を下方に誘導することで口腔内での操作スペースを確保し,十分な開口量が得られたため以降の印象採得は通法に準じて行った。介護者による着脱を考慮し抵抗の少ない形態にしたところ,装着後約2週間で潰瘍は改善傾向を示した。しかしあくびに伴うマウスピースの脱離が頻発し再度咬傷を認めたため,マウスピースを下顎のみの形態へ変更した。下顎前歯唇側部に厚みを付与し下唇内転を防止するとともに,誤飲防止のため紐を付与しテーピングにより口腔外へ固定した。併せて介護者に対してマウスピースの着脱方法ならびに口腔および装置の清掃方法について再指導を行い,口腔管理体制を整えた。形態変更後は脱離なく使用可能となり,咬傷の再発も認めず約2週間で良好な治癒経過が得られた。なお,本報告の発表について代諾者から文書による同意を得ている。
【考察】
 上下顎一体型マウスピースは下唇内転防止に有用であったが,意識障害患者では無意識下のあくびによる装置脱離が問題となった。下顎のみのマウスピースへ変更し,形態的工夫および安全管理を行うことで下唇内転防止,装置脱離への対処,介助者の着脱にも配慮でき良好な結果が得られた。症状や患者の状態に応じてマウスピースの形態を調整することは意識障害患者における口唇咬傷管理に有用であると考えられた。
 (COI開示:なし)(倫理審査対象外)