講演情報

[認定P-30]身体アセスメントおよび摂食嚥下障害から神経筋疾患を疑い,診断に至ったパーキンソン病の一例

○八尾 有紀1、戸原 玄1 (1. 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)
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【緒言・目的】
高齢者では,うつ病や神経疾患,サルコペニア,薬剤の影響など複数の要因が嚥下機能に影響し,誤嚥性肺炎や栄養障害のリスクが高まる。口腔・嚥下機能のみならず全身状態を包括的に評価し,背景因子を検討することが重要である。老年期うつ病の診断後に嚥下困難感を主訴に当科受診し,パーキンソン病と診断された患者の一例を報告する。
【症例および経過】
78歳男性。老年期うつ病発症半年後より,食事中と夜間のむせを自覚していた。初診時のBMI22.8kg/㎡。食形態は常食・液体,食事時間は30分。既往歴は腎盂癌,内服薬はベンラファキシン塩酸塩。外来受診時にすり足歩行,上肢の歯車用固縮などの錐体外路症状およびMyerson兆候を認めた。舌圧は24.3kPaで低舌圧を認め,嚥下造影検査(VF)では固形物の送り込み時間の延長,液体摂取時に不顕性誤嚥があり(DSS3),口腔期と咽頭期の障害と診断した。神経筋疾患を疑い脳神経内科へ精査を依頼し,パーキンソン病と診断された。レボドパの内服開始後,初診3か月には,食事中のむせは軽減したが,VFでは液体の不顕性誤嚥あり,咀嚼が緩慢で食塊形成不良,咽頭残留を認めたため,水分は中間とろみ(学会分類2021),食事は嚥下調整食4(軟飯・刻みとろみ)へと変更した。初診7か月後に介護認定を受け,デイサービスとSTによるリハビリテーションを開始した。舌圧は30.5kPaまで向上したが,身体活動量増加に伴い体重が3㎏減少(BMI21.8kg/㎡)したため,栄養補助食品での摂取エネルギー増加を指導した。初診1年1か月後にCOVID-19感染後の誤嚥性肺炎を契機に経口摂取が困難となり,胃瘻造設後し施設入所,終診となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
むせや誤嚥を単なる加齢や口腔機能低下と捉えると,背景疾患を見逃す可能性がある。身体所見を含めた包括的評価と,疾患に特徴的な症状やスクリーニング法により,医科への精査依頼から診断,適切な治療につながった。パーキンソン病に対しては,薬物療法や食事形態調整,STのリハビリテーションにより一定の機能向上を認めた。嚥下障害患者は日常の栄養管理や生活環境調整も重要であり,訪問診療への移行も含めた支援体制を検討することも必要であると考えた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)