講演情報
[認定P-31]口腔底癌切除後の舌欠損および舌運動機能低下に起因する咀嚼障害に対して,舌接触補助床および顎義歯を製作した症例
○村上 和裕1、堀 一浩1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科 包括歯科補綴学分野)
【緒言・目的】
舌は咀嚼中の食塊形成および食塊移送において重要な役割を果たしているため,舌の欠損や舌運動機能の低下は咀嚼機能を著しく低下させる。今回,口腔底癌の切除により広範囲の舌欠損と舌運動機能低下が生じた高齢者に対して舌接触補助床(PAP)と顎義歯を適用することで食形態が向上した 1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
76 歳,男性。令和6年5月に正中口腔底癌の診断のもと,口腔外科にて口腔底腫瘍切除術,舌亜全摘術,右側辺縁切除術,両側頸部郭清術,前外側大腿皮弁再建術,術後放射線治療を受けた。術後から摂食嚥下機能回復部にて摂食機能療法(舌挙上訓練)を受け,経口摂取(全粥,ペースト食)が可能となり,同年8月に退院となった。その後,米飯咀嚼時の口腔内の食渣停滞を主訴に,同年11月に当科受診となった。嚥下造影検査では米飯の咀嚼嚥下時に食塊が口腔内に停滞し,咽頭移送がスムーズに行えていなかった。術後に下顎左側犬歯から右側のデンチャースペースが狭く,支持組織として不安定であったため,上顎のみに義歯形態のPAPを製作した。PAP装着後,直ちに主訴の改善を認めたが,PAPを装着することで内翻した下口唇の左側臼歯相当部を誤咬するようになった。そこで,下口唇の内翻を防止することを目的に下顎顎義歯を製作した。下顎義歯装着後,口唇の誤咬は減り,軟飯や刻み食を問題なく摂取できるようになった。上下顎義歯装着後6か月経過時には食形態の変化はなかったが,食事の摂取量が増加し,補綴介入前と比較して3kgの体重増加がみられた。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は,術後早期から摂食機能療法の介入を行ったことで,咽頭期の嚥下機能が改善し,PAP非装着でも流動性の高い食事の摂取が可能であった。一方で,食塊形成・移送が必要となる流動性の低い固形食ではPAPが有効であった。PAPが舌欠損と舌運動機能の低下を代償したことでスムーズな食塊形成・移送が可能となり,食形態の向上につながった。また,食事の摂取量が増加したことで栄養状態の改善に至ったと考えられる。なお,本症例では構音機能に関する訴えが無かったが,今後は患者の要望に応じて構音機能の改善を目的としたPAPを製作する必要がある。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
舌は咀嚼中の食塊形成および食塊移送において重要な役割を果たしているため,舌の欠損や舌運動機能の低下は咀嚼機能を著しく低下させる。今回,口腔底癌の切除により広範囲の舌欠損と舌運動機能低下が生じた高齢者に対して舌接触補助床(PAP)と顎義歯を適用することで食形態が向上した 1 例を経験したので報告する。
【症例および経過】
76 歳,男性。令和6年5月に正中口腔底癌の診断のもと,口腔外科にて口腔底腫瘍切除術,舌亜全摘術,右側辺縁切除術,両側頸部郭清術,前外側大腿皮弁再建術,術後放射線治療を受けた。術後から摂食嚥下機能回復部にて摂食機能療法(舌挙上訓練)を受け,経口摂取(全粥,ペースト食)が可能となり,同年8月に退院となった。その後,米飯咀嚼時の口腔内の食渣停滞を主訴に,同年11月に当科受診となった。嚥下造影検査では米飯の咀嚼嚥下時に食塊が口腔内に停滞し,咽頭移送がスムーズに行えていなかった。術後に下顎左側犬歯から右側のデンチャースペースが狭く,支持組織として不安定であったため,上顎のみに義歯形態のPAPを製作した。PAP装着後,直ちに主訴の改善を認めたが,PAPを装着することで内翻した下口唇の左側臼歯相当部を誤咬するようになった。そこで,下口唇の内翻を防止することを目的に下顎顎義歯を製作した。下顎義歯装着後,口唇の誤咬は減り,軟飯や刻み食を問題なく摂取できるようになった。上下顎義歯装着後6か月経過時には食形態の変化はなかったが,食事の摂取量が増加し,補綴介入前と比較して3kgの体重増加がみられた。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
本症例は,術後早期から摂食機能療法の介入を行ったことで,咽頭期の嚥下機能が改善し,PAP非装着でも流動性の高い食事の摂取が可能であった。一方で,食塊形成・移送が必要となる流動性の低い固形食ではPAPが有効であった。PAPが舌欠損と舌運動機能の低下を代償したことでスムーズな食塊形成・移送が可能となり,食形態の向上につながった。また,食事の摂取量が増加したことで栄養状態の改善に至ったと考えられる。なお,本症例では構音機能に関する訴えが無かったが,今後は患者の要望に応じて構音機能の改善を目的としたPAPを製作する必要がある。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)
