講演情報

[認定P-32]上顎部分切除後の歯肉癌患者に対して開口訓練と顎義歯製作を行い口腔機能を回復した症例

○河崎 雅弘1、柏﨑 晴彦2 (1. 九州大学病院 咬合補綴科、2. 九州大学大学院歯学研究院高齢者歯科学・全身管理歯科学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【緒言・目的】
 上顎歯肉癌に対する外科的療法,放射線療法による開口障害および口腔機能低下に対して,開口訓練や機能訓練を行い,顎義歯を製作し口腔機能を回復した1例を報告する。
【症例および経過】
 79 歳,女性。高脂血症,骨粗鬆症の既往あり。2020年9月に九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科で左側上歯肉癌の診断の下,左側上顎部分切除を行い,術後即時顎補綴装置(ISO)を装着した。2020年11月から放射線治療を開始し,12月から開口障害が生じ,ISO着脱も苦労するようになったため,開口訓練を毎日行うように指示した。2021年7月ごろから自主開口量の増加を認め,上顎義歯製作を開始した。義歯装着直後の8月には,口腔機能および口腔関連QOLの低下を認めた。舌ブラシや含嗽剤の使用,唾液腺マッサージ,健側でのナッツ類の咀嚼や食事時の咀嚼回数を増加させること,ペコぱんだ®(株式会社ジェイエムエス)の使用の継続を指導した。義歯装着から約半年後の2022年2月には口腔機能検査において咀嚼機能,嚥下機能を含む4項目が基準値を上回った。半年に1回の頻度で口腔機能検査および口腔関連QOLの評価を行っており,経過良好である。
なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 術直後には精神的落ち込みが大きい状態であったが,退院後の生活に希望を持たせられるような「退院後にやりたいこと」,「自身の趣味」についてのコミュニケーションを続けたことで,前向きな発言を認めるようになった。精神面のサポートが機能訓練への患者の自主性の向上へつながったと考えられる。
本症例では開口障害が生じた初期から継続的に開口訓練を行ったことが開口量の増加につながった。顎義歯装着時には口腔機能検査すべての項目で基準値以下であったが,それぞれに対応した訓練および指導を行い,患者がそれらを継続的に行ったことで,半年で咀嚼機能,嚥下機能を含めた4項目が基準値を上回った。患者は食事形態を工夫し,食事に対して意欲的であったことも口腔機能および口腔関連QOLの回復に寄与したと考えられる。
COI開示:なし
倫理審査対象外