講演情報

[認定P-36]外来診療においてパーキンソン病発症患者に義歯新製と口腔機能管理を行った症例

○戸澤 聖也1、西 恭宏1 (1. 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科口腔顎顔面補綴学分野)
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【緒言・目的】
 パーキンソン病は振戦,動作緩慢,筋強剛,姿勢保持障害を主症状とする神経変性疾患であり,嚥下障害も運動症状の一つである。発症患者の死因として誤嚥性肺炎が多く,前述の嚥下障害が深く関与していると考えられる。今回,初期のパーキンソン病患者に対し,義歯を製作し口腔機能訓練を継続することで口腔機能の改善を認めた1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
 70歳,糖尿病,逆流性食道炎を有する男性。2016年から歯科治療および定期的メンテナンスを継続していたが,2022年9月から発音障害,審美障害を訴え,流涎も生じるようになった。義歯の診査から咬合高径低下,口腔精密機能検査から咬合力:171N,EAT-10:6で咬合力と嚥下機能の低下が認められたため,上顎全部床義歯製作と嚥下機能に対する口腔機能訓練と指導を開始した。新義歯製作は,発音と審美に配慮して人工歯排列を行い,咬合高径と義歯床形態についてはパラトグラムを参考に形態を検討した。新義歯装着後の口腔機能精密検査では改善を認めたが,発音は不明慮さが残存した。そこで,現在の全身状態を再評価し,姿勢保持困難と易疲労性の訴えがあったため,脳神経内科に対診したところパーキンソン病の診断と投薬加療が開始された。発音障害の原因としてパーキンソン病の背景があることから,嚥下および舌運動に関連する訓練を継続して月に1回指導して経過を診ている。 なお,本報告の発表については患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 適切な義歯製作および口腔機能訓練を行っても発音障害が完全に改善しなかったことが,全身性神経変性疾患を疑う契機となり,パーキンソン病の診断につながった点は歯科から全身を捉える上で重要であったと考えられる。投薬による治療は継続されているため,服薬状況による症状の変化や状況について注意深く観察していく必要がある。現在は,発症初期の段階であるため外来受診可能であり,定期的な訓練と自宅でのトレーニングにより口腔機能の維持が得られている。今後はパーキンソン病の進行による通院困難を見据えて外来診療を行い,訪問診療へ移行した際は,多職種連携による口腔および全身管理をしていく必要があると考えられる。
(COI 開示:なし)
(倫理審査対象外)