講演情報
[認定P-40]脳性麻痺による不随意運動を有する患者に対し義歯製作を行い咀嚼機能改善を得た症例
○堤 貴司1、内藤 徹1 (1. 福岡歯科大学 総合歯科学講座)
【緒言・目的】
脳性麻痺患者では不随意運動により粘膜損傷等の偶発症リスクが高く、訪問歯科診療では安全確保が重要である。また、適応力の低下や介助環境も踏まえた補綴設計が求められる。本症例は、咬合支持を喪失した脳性麻痺患者に対して義歯製作により咀嚼機能の改善を図ることを目的とした。
【症例および経過】
71歳男性。先天性の脳性麻痺による四肢体幹機能障害があり自宅療養中である。意思疎通は可能であるが発語が不明瞭であるため、訪問時は同居家族 (妹)の支援を要する。また、頭頸部の不随意運動を認めるため、複数人の抑制下で介入している。口腔内は、複数歯の歯冠破折や歯周炎進行による抜歯が続いたことにより、残存歯が減少し、咬合支持が低下していた。「また、柿を食べたい。」との訴えがあり、義歯製作することとした。研究用模型上で予備サベイングを行い、現状の支台歯の形態でも義歯の着脱方向は設定可能と判断できたため、不随意運動による粘膜損傷リスクを考慮し、支台歯形成は行わず既存のレストシート等を活用して上下顎部分床義歯を製作した。概形印象採得は2回繰り返し個人トレーを再制作する必要があったが、家族の支援もあり精密印象採得以降は問題なく進行し義歯完成に至った。臼歯部は偏位への適応を考慮し0度人工歯を選択した。装着後1か月以内は床辺縁形態修正および粘膜面調整を要したが、その後は安定し日常使用が可能となった。総義歯咀嚼能力判定表では「かまぼこ」の咀嚼が可能となり、咀嚼能力の改善を認めた。一定期間、粘膜発赤や義歯性潰瘍を認めず、口腔衛生管理と義歯経過観察を継続する方針とした。
なお、本報告の発表について患者本人から口頭同意とご家族から文書による同意を得ている。
【考察】
脳性麻痺患者への補綴治療では、粘膜損傷等の偶発症の予防を最優先に計画する必要がある。本症例では、短時間・分割対応を基本とし、家族同席のもとで安全性を確保しながら治療を進めた点が有効であった。また、支台歯への新たな侵襲を避け、既存の支持要素を活用したこと、ならびに0度人工歯を選択して偏位の影響を受けにくい咬合を付与したことが、装着受容と咀嚼機能改善につながったと考えられた。要介護患者では義歯製作そのものだけでなく、治療継続可能性、日常使用のしやすさ、家族支援を含めた介護実装性を重視することが重要である。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
脳性麻痺患者では不随意運動により粘膜損傷等の偶発症リスクが高く、訪問歯科診療では安全確保が重要である。また、適応力の低下や介助環境も踏まえた補綴設計が求められる。本症例は、咬合支持を喪失した脳性麻痺患者に対して義歯製作により咀嚼機能の改善を図ることを目的とした。
【症例および経過】
71歳男性。先天性の脳性麻痺による四肢体幹機能障害があり自宅療養中である。意思疎通は可能であるが発語が不明瞭であるため、訪問時は同居家族 (妹)の支援を要する。また、頭頸部の不随意運動を認めるため、複数人の抑制下で介入している。口腔内は、複数歯の歯冠破折や歯周炎進行による抜歯が続いたことにより、残存歯が減少し、咬合支持が低下していた。「また、柿を食べたい。」との訴えがあり、義歯製作することとした。研究用模型上で予備サベイングを行い、現状の支台歯の形態でも義歯の着脱方向は設定可能と判断できたため、不随意運動による粘膜損傷リスクを考慮し、支台歯形成は行わず既存のレストシート等を活用して上下顎部分床義歯を製作した。概形印象採得は2回繰り返し個人トレーを再制作する必要があったが、家族の支援もあり精密印象採得以降は問題なく進行し義歯完成に至った。臼歯部は偏位への適応を考慮し0度人工歯を選択した。装着後1か月以内は床辺縁形態修正および粘膜面調整を要したが、その後は安定し日常使用が可能となった。総義歯咀嚼能力判定表では「かまぼこ」の咀嚼が可能となり、咀嚼能力の改善を認めた。一定期間、粘膜発赤や義歯性潰瘍を認めず、口腔衛生管理と義歯経過観察を継続する方針とした。
なお、本報告の発表について患者本人から口頭同意とご家族から文書による同意を得ている。
【考察】
脳性麻痺患者への補綴治療では、粘膜損傷等の偶発症の予防を最優先に計画する必要がある。本症例では、短時間・分割対応を基本とし、家族同席のもとで安全性を確保しながら治療を進めた点が有効であった。また、支台歯への新たな侵襲を避け、既存の支持要素を活用したこと、ならびに0度人工歯を選択して偏位の影響を受けにくい咬合を付与したことが、装着受容と咀嚼機能改善につながったと考えられた。要介護患者では義歯製作そのものだけでなく、治療継続可能性、日常使用のしやすさ、家族支援を含めた介護実装性を重視することが重要である。
(COI開示:なし)
(倫理審査対象外)
