講演情報

[摂食審査P-02]摂食嚥下障害の病態診断から原疾患の診断に至った症例

○真柄 仁1,2 (1. 新潟大学医歯学総合病院 摂食嚥下機能回復部、2. 新潟大学医歯保健学研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野)
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【緒言】
 摂食嚥下障害を診断する上で,原疾患と病態との関連を把握することが必要である。今回,摂食嚥下障害の病態診断から,原疾患の診断に至った症例を報告する。
【症例および経過】
 患者は78歳女性(BMI25.5 kg/m2),肺癌のため肺葉切除後,食事を継続したが,術後1週目にむせが頻出し,食事摂取困難となった。術後は縦隔気腫の所見が認められ,呼吸器外科より嚥下機能評価目的に当科紹介となった。初診時評価では,顎舌,軟口蓋の運動感覚ともに明らかな問題なし,反復唾液嚥下テスト1回,改訂水飲みテスト3b点であった。嚥下造影検査(VF)では,嚥下惹起不良,咽頭収縮,食道入口部開大は両側とも不良,嚥下内視鏡検査(VE)では,軟口蓋挙上は明らかな左右差なし,分泌物貯留と左側喉頭運動不良を認め,検査食の残留物誤嚥が認められた。当初,縦隔気腫を起因とした左側反回神経麻痺疑いとしたが,咽頭収縮,食道入口部開大不良の原因は不明であった。現症を考慮した訓練としてプッシング訓練,頭部挙上訓練,姿勢調整下で直接訓練を開始した。介入10日目にVE再評価,残留物誤嚥の改善は認められなかった。遷延する球麻痺症状は縦郭気腫の影響では説明がつかず,同日,呼吸器外科主治医へ脳幹領域の画像評価を依頼,脳神経内科対診となった。11日目の画像評価で左側延髄に限局した脳梗塞を認め,ワレンベルグ症候群の診断となった。以降,嚥下調整食での安定した直接訓練を急性期リハビリテーションの目標として,食道入口部開大不良に対しバルーン訓練を開始,引き抜き時の抵抗からエア注入量を増加,VEまたはVFの再評価にて直接訓練時の食塊残留量の軽減を確認した。介入31日目からゼリー食開始,45日目からミキサー食に変更,最終的には経管栄養を一部漸減し60日目に回復期病院へ転院となった。なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 ワレンベルグ症候群における球麻痺症状を伴う摂食嚥下障害は大多数に生じる。本症例の脳梗塞部位が腹側に存在し,前庭神経核や小脳脚の障害である,めまいや小脳失調症状に乏しく,ワレンベルグ症候群と認識されにくかったが,一方で嚥下機能評価を継続する中で末梢よりも中枢神経レベルの障害が疑われ,その原疾患の特定につながったと考えられた。
(COI 開示:なし)
(新潟大学倫理審査委員会承認番号E2025-0033)