講演情報

[摂食審査P-03]口腔相を中心とした嚥下障害患者に対し,リハビリテーションと並行して補綴的アプローチを行った症例

○小谷 朋子1 (1. 川口きゅうぽらリハビリテーション病院)
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【緒言・目的】
 被殻出血後の嚥下障害患者に対し,リハビリテーションと並行して食形態調整および舌接触補助床(PAP)を用いた補綴的介入を行った結果,嚥下機能および構音機能が改善し,在宅復帰に至った一例を報告する。
【症例および経過】
 69歳女性。20XX年5月22日,右片麻痺および失語が出現し救急搬送された。左被殻出血と診断され保存的加療となり,急性期は経鼻経管栄養で管理された。6月11日リハビリテーション目的に当院へ転院した。身長145.0cm,体重56.3kg(BMI 26.8 kg/m2)。右片麻痺,右口角下垂,開鼻声,失語症を認めた。口腔内は上顎無歯顎,下顎部分床義歯不適合,口腔衛生状態不良であった。嚥下検査(VE,VF)では鼻咽腔閉鎖不全,嚥下反射惹起遅延,口腔内残留を認めたが,咽頭収縮は比較的維持されており, ペースト食では咽頭残留を認めなかった。以上より,高次脳機能障害に加え,舌圧低下および巧緻性低下,歯牙欠損による咀嚼障害を主体とする口腔相障害があり, 嚥下障害が生じたと推察した。脳画像所見より, 血腫は内包膝部にも及んでいる可能性が高く, 皮質延髄路の障害による右舌下神経麻痺は否定できないが, 臨床像としては舌の偏位よりも, 舌運動の緩慢さや巧緻性の低下, 持続的な舌圧生成の不良が目立った。これは, 大脳基底核の損傷による運動制御障害が強く影響しているためであると考察した。経口摂取を開始し,早期に経鼻胃管を抜去した後,上顎義歯の新製および食形態を調整し, 軟菜食摂取および自宅退院を目標とした。PT, OTによる身体的リハビリテーション, STによる高次脳機能訓練, 構音訓練, および口腔リハビリテーションを実施し, 適宜再評価・食形態の変更を行った。 退院前には義歯装着で軟菜食の摂取が可能となったが,舌可動域制限と舌圧低下(2.7kPa),口蓋部残留を認めた。義歯をPAPへ修理後,舌圧は11.0kPaへ改善し,発話明瞭度も改善した。10月15日自宅退院とし,外来フォロー後,訪問歯科へ紹介した。
【考察】
 大脳基底核の障害では,運動制御障害により口腔機能が低下しうる点に留意が必要である。本症例では, リハビリテーションに加え,PAPを製作した結果,食形態の改善および自宅退院に繋がったと考えられた。なお, 本症例報告の公表にあたり, 患者本人より同意を得ている。(COI開示:なし,倫理審査対象外)