講演情報
[LS2]健やかな長寿社会を支える「咀嚼」の力 ー日本咀嚼学会の歩みとこれからの展望ー
○増田 裕次1 (1. 松本歯科大学 総合歯科医学研究所 顎口腔機能制御学部門)

【略歴】
1986年 大阪大学歯学部卒業 歯科医師免許取得
1986年 大阪大学歯学部助手 口腔生理学講座
2001年 大阪大学大学院歯学研究科講師 口腔生理学教室
2003年 大阪大学大学院歯学研究科助教授 口腔生理学教室
2004年 松本歯科大学総合歯科医学研究所教授 顎口腔機能制御学部門
2005年 松本歯科大学大学院教授 顎口腔機能制御学講座(兼務)
2010年 松本歯科大学総合歯科医学研究所主任教授 顎口腔機能制御学部門
2024年 松本歯科大学 特任教授(現職)
【所属学会】
日本咀嚼学会[理事長]
日本顎口腔機能学会
日本老年歯科医学会
1986年 大阪大学歯学部卒業 歯科医師免許取得
1986年 大阪大学歯学部助手 口腔生理学講座
2001年 大阪大学大学院歯学研究科講師 口腔生理学教室
2003年 大阪大学大学院歯学研究科助教授 口腔生理学教室
2004年 松本歯科大学総合歯科医学研究所教授 顎口腔機能制御学部門
2005年 松本歯科大学大学院教授 顎口腔機能制御学講座(兼務)
2010年 松本歯科大学総合歯科医学研究所主任教授 顎口腔機能制御学部門
2024年 松本歯科大学 特任教授(現職)
【所属学会】
日本咀嚼学会[理事長]
日本顎口腔機能学会
日本老年歯科医学会
【はじめに:日本咀嚼学会の設立趣旨と目的】
特定非営利活動法人日本咀嚼学会は、健康維持に不可欠な「栄養の経口摂取機能」を多角的に研究・啓発することを目的として活動している。本学会の最大の特徴は、歯科医学のみならず、栄養学、食品学、調理学、さらには介護・看護・医療・教育の現場で高齢者や子どもたちと接する多職種の専門家が集結している点にある。私たちは、食物を口から取り込み、咀嚼・嚥下を経て消化管へと送り届ける一連の仕組みや、それに適した食品の選択・提供方法を科学的に解明し、その成果を広く国民に還元することを目指している。
【咀嚼の多面的な意義:生理学的・食品学的視点から】
「咀嚼」は単に食物を細かく砕くプロセスに留まらない。生理学的には、顔面筋・咀嚼筋・舌などの多くの器官が関与する極めて複雑かつ繊細な運動であり、口腔感覚によって支えられている。食品学的には、食物を唾液と混ぜ合わせ、嚥下に適した「食塊」へと加工する消化の第一歩である。 また、咀嚼は「食品の安全を確認する動作」でもある。食物を噛むことで味や食感を楽しむ行為は、同時にその安全性を確認するプロセスであり、脳に対して「美味しさ」という報酬を与える重要な意義を持つ。現代社会では調理技術の向上により軟らかい食品が増え、咀嚼の機会が変化しつつあるが、味わい深く安全に食べるためには、この「噛む」プロセスを正しく理解し、維持していくことが不可欠である。
【全身の健康管理と食育・高齢者医療への貢献】
咀嚼は全身の健康管理、特に生活習慣病の予防においても重要な役割を果たす。しっかり噛んで時間をかけて食べることは、満腹中枢を刺激し、エネルギー摂取量の抑制に寄与することが示されている。また、子どもたちの「食育」においては、顎の発育や健全な食習慣の形成に寄与し、生涯にわたる健康の基礎をつくる。 一方、高齢期においては、安易な経管栄養や胃瘻に頼るのではなく、口腔ケアと食内容の工夫による「口から食べる」ことの維持が、QOL(生活の質)向上の鍵を握っている。咀嚼機能の維持・向上は、単なる栄養摂取の手段ではなく、高齢者の尊厳ある生活を支える基盤であるといえる。
【結びに:多職種連携による未来への展望】
日本咀嚼学会は、市民向けの「ファミリーフォーラム」の開催や啓発書籍の発行、学術大会を通じた最新知見の共有など、咀嚼の重要性を社会に発信し続けてきた。 超高齢社会を迎えた今日、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、医師、介護職といった多職種が密に連携して「食べる喜び」を支えていくことの意義はますます高まっている。本講演では、これまでの学会活動の歩みを振り返るとともに、科学的根拠に基づいた咀嚼の価値を再確認し、明日からの臨床や研究、そして地域社会での啓発活動に活かせる展望を共有したい。
特定非営利活動法人日本咀嚼学会は、健康維持に不可欠な「栄養の経口摂取機能」を多角的に研究・啓発することを目的として活動している。本学会の最大の特徴は、歯科医学のみならず、栄養学、食品学、調理学、さらには介護・看護・医療・教育の現場で高齢者や子どもたちと接する多職種の専門家が集結している点にある。私たちは、食物を口から取り込み、咀嚼・嚥下を経て消化管へと送り届ける一連の仕組みや、それに適した食品の選択・提供方法を科学的に解明し、その成果を広く国民に還元することを目指している。
【咀嚼の多面的な意義:生理学的・食品学的視点から】
「咀嚼」は単に食物を細かく砕くプロセスに留まらない。生理学的には、顔面筋・咀嚼筋・舌などの多くの器官が関与する極めて複雑かつ繊細な運動であり、口腔感覚によって支えられている。食品学的には、食物を唾液と混ぜ合わせ、嚥下に適した「食塊」へと加工する消化の第一歩である。 また、咀嚼は「食品の安全を確認する動作」でもある。食物を噛むことで味や食感を楽しむ行為は、同時にその安全性を確認するプロセスであり、脳に対して「美味しさ」という報酬を与える重要な意義を持つ。現代社会では調理技術の向上により軟らかい食品が増え、咀嚼の機会が変化しつつあるが、味わい深く安全に食べるためには、この「噛む」プロセスを正しく理解し、維持していくことが不可欠である。
【全身の健康管理と食育・高齢者医療への貢献】
咀嚼は全身の健康管理、特に生活習慣病の予防においても重要な役割を果たす。しっかり噛んで時間をかけて食べることは、満腹中枢を刺激し、エネルギー摂取量の抑制に寄与することが示されている。また、子どもたちの「食育」においては、顎の発育や健全な食習慣の形成に寄与し、生涯にわたる健康の基礎をつくる。 一方、高齢期においては、安易な経管栄養や胃瘻に頼るのではなく、口腔ケアと食内容の工夫による「口から食べる」ことの維持が、QOL(生活の質)向上の鍵を握っている。咀嚼機能の維持・向上は、単なる栄養摂取の手段ではなく、高齢者の尊厳ある生活を支える基盤であるといえる。
【結びに:多職種連携による未来への展望】
日本咀嚼学会は、市民向けの「ファミリーフォーラム」の開催や啓発書籍の発行、学術大会を通じた最新知見の共有など、咀嚼の重要性を社会に発信し続けてきた。 超高齢社会を迎えた今日、歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士、医師、介護職といった多職種が密に連携して「食べる喜び」を支えていくことの意義はますます高まっている。本講演では、これまでの学会活動の歩みを振り返るとともに、科学的根拠に基づいた咀嚼の価値を再確認し、明日からの臨床や研究、そして地域社会での啓発活動に活かせる展望を共有したい。
