講演情報

[O-2-7]アルツハイマー型認知症が疑われた口腔セネストパチーの1例

○堀家 彩音1、真山 達也1、戸原 玄1、豊福 明2 (1. 東京科学大学医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野、2. 東京科学大学医歯学総合研究科 歯科心身医学分野)
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【緒言・目的】
口腔セネストパチーは高齢者に多いが,潜在する認知症の顕在化や増悪がみられることもあり,薬物療法には慎重な判断が求められる。今回,アルツハイマー型認知症が疑われた本症の1例を経験したので報告する。
【症例および経過】
患者:68歳女性
主訴:右上犬歯がぐちゃぐちゃになっている感じ。歯の表面に膜があり,ヌメヌメしている感じがする。
既往歴:両側人工膝関節置換術高血圧症,潰瘍性大腸炎
現病歴:2025年5月ころより,上顎前歯に「ゆで卵の皮」がついている感じが出現。右上犬歯がぐちゃぐちゃになる感じや液体や泡が出るような感覚もあった。近医歯科で相談したところ,当科を紹介され2025年7月当科初診。
治療および経過:口腔セネストパチーと診断した。処方前にSPECT施行したところ,楔前部を含めた両側側頭頭頂連合野の相対的血流低下が指摘されたため,アルツハイマー型認知症の精査のために当院脳神経内科に対診した。神経心理学テスト成績は,MOCA-J:21点と低下していたが,MMSE:28点,HDS-R:29点,WMS-Rは正常範囲内。頭部MRI検査でも形態学的に典型的ADではなく,swallow tail signを指摘されたがパーキンソン症状も認められず,橋底部の軽度短縮も認められたが,小脳失調症状は認められなかった。以上の所見より脳神経内科的には年2回の経過観察となった。しかし,口腔セネストパチーが軽減したわけではなく,「歯が欠けてる感じで,ネバネバ,泡で気持ち悪い。これがずっと続くと思うと憂鬱」と治療を希望された。薬物による認知症への影響も丁寧に説明し,リスクも理解してもらった上で同意を得て11月9日よりアリピプラゾール0.5㎎処方した。特に副作用もなく1週間後に同剤1㎎に増量。以後「それほど気にならなくなった」と口腔内の異物感の緩和が得られた。現在も良好な経過が得られ,脳神経内科と併診しながら慎重に経過観察中である。なお本報告に際し,患者本人に書面での同意を得た。
【考察】
口腔セネストパチーの経過中にアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症が顕在化する例をいくつか経験している。一方で患者の口腔内不快感への苦痛も看過できず,関連他科とも連携しながら慎重な長期経過の観察および治療方針の検討が求められると考える。
(COI 開示:なし)(倫理審査対象外)