講演情報
[O-3-5]補綴装置の頬舌的位置が口腔機能に及ぼす影響― ニュートラルゾーンを指標とした補綴設計の検討 ―
○辻 将1、坪井 翔太郎1、中川 朋哉1、鈴木 龍1、山根 源之1 (1. 医療法人社団八龍会すずき歯科医院)
【目的】
口腔機能の低下は,歯牙欠損の進行や加齢に伴い顕在化し,欠損補綴を必要とする中高年期から高齢期において重要な臨床課題となる。一方,補綴治療では歯の形態的回復が重視されることが多く,舌や口腔周囲筋機能との調和を考慮した補綴装置の頬舌的位置設計については,客観的な設計指標が十分に確立されていない。本研究は,下顎第一大臼歯欠損を含む欠損症例を対象に,ニュートラルゾーンを設計指標とした補綴設計が口腔機能に及ぼす影響を検討することを目的とした。
【方法】
下顎第一大臼歯欠損を含む欠損に対しインプラント治療を希望した16症例を対象とした。インプラント埋入術者は必ずしも同一ではない。補綴処置は同一術者が担当し,同一症例に対して,ニュートラルゾーンを設計指標として極力その範囲内に補綴装置を設計した補綴装置(NZ設計)と,設計指標を規定しない従来設計による補綴装置(CON設計)をそれぞれ作製した。主観的評価としてVisual Analog Scale(VAS)を用い,舌感および発音のしやすさ等を評価した。機能評価として咀嚼チェックガムにより咀嚼能率を測定した。なお,咀嚼時に違和感を認めた1症例については,咀嚼能率のみ解析対象から除外した。
【結果と考察】
VASによる主観的評価(n=16)では,舌感においてNZ設計がCON設計より高値を示した(中央値:62.5 vs 53.0,p=0.035)。また,発音のしやすさにおいてもNZ設計が高値を示した(中央値:64.0 vs 58.3,p=0.031)。一方,咀嚼能率(n=15)はCON設計で高値を示した(中央値:6.55 vs 6.35,p=0.0026)。設計の特徴として,CON設計では補綴装置がニュートラルゾーンから舌側へ逸脱していた。これらの結果から,ニュートラルゾーン内に補綴装置を配置した設計は舌感の改善に寄与する一方,咀嚼能率を向上させるためには,補綴装置をニュートラルゾーンから舌側へ逸脱させる必要がある可能性が示唆された。すなわち,咀嚼しやすい補綴装置とは,舌圧がかかりにくい装置ではなく,咀嚼運動時において大臼歯部舌側豊隆部が自然に舌に接触し,食塊移送・食塊形成を補助するよう設計された形態である可能性が考えられる。
(COI 開示:なし)
(倫理審査委員会番号17000175承認 承認番号2025-01号)
口腔機能の低下は,歯牙欠損の進行や加齢に伴い顕在化し,欠損補綴を必要とする中高年期から高齢期において重要な臨床課題となる。一方,補綴治療では歯の形態的回復が重視されることが多く,舌や口腔周囲筋機能との調和を考慮した補綴装置の頬舌的位置設計については,客観的な設計指標が十分に確立されていない。本研究は,下顎第一大臼歯欠損を含む欠損症例を対象に,ニュートラルゾーンを設計指標とした補綴設計が口腔機能に及ぼす影響を検討することを目的とした。
【方法】
下顎第一大臼歯欠損を含む欠損に対しインプラント治療を希望した16症例を対象とした。インプラント埋入術者は必ずしも同一ではない。補綴処置は同一術者が担当し,同一症例に対して,ニュートラルゾーンを設計指標として極力その範囲内に補綴装置を設計した補綴装置(NZ設計)と,設計指標を規定しない従来設計による補綴装置(CON設計)をそれぞれ作製した。主観的評価としてVisual Analog Scale(VAS)を用い,舌感および発音のしやすさ等を評価した。機能評価として咀嚼チェックガムにより咀嚼能率を測定した。なお,咀嚼時に違和感を認めた1症例については,咀嚼能率のみ解析対象から除外した。
【結果と考察】
VASによる主観的評価(n=16)では,舌感においてNZ設計がCON設計より高値を示した(中央値:62.5 vs 53.0,p=0.035)。また,発音のしやすさにおいてもNZ設計が高値を示した(中央値:64.0 vs 58.3,p=0.031)。一方,咀嚼能率(n=15)はCON設計で高値を示した(中央値:6.55 vs 6.35,p=0.0026)。設計の特徴として,CON設計では補綴装置がニュートラルゾーンから舌側へ逸脱していた。これらの結果から,ニュートラルゾーン内に補綴装置を配置した設計は舌感の改善に寄与する一方,咀嚼能率を向上させるためには,補綴装置をニュートラルゾーンから舌側へ逸脱させる必要がある可能性が示唆された。すなわち,咀嚼しやすい補綴装置とは,舌圧がかかりにくい装置ではなく,咀嚼運動時において大臼歯部舌側豊隆部が自然に舌に接触し,食塊移送・食塊形成を補助するよう設計された形態である可能性が考えられる。
(COI 開示:なし)
(倫理審査委員会番号17000175承認 承認番号2025-01号)
