講演情報

[O-4-2]患者調査歯科診療所受療率のベイズ型Cohortモデルによる分析
―近年高齢日本女性の歯数改善の背景―

○那須 郁夫1、中村 隆2 (1. 東京都健康長寿医療センター研究所、2. 統計数理研究所)
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【目的】
 これまで,歯科疾患実態調査(歯実調)による日本人女性高齢者の歯数の改善について保有歯数の内訳のCohort分析を重ね,歯数の増加要因として,健全歯の保持(第一次予防)に加えて,処置歯の増加(第二次予防)とその維持を挙げた。そこで本研究では,これらと「歯科受療行動」との関係に着目点を置き,同じ分析法を用いて,歯実調と同時期の厚労省患者調査歯科診療所受療率の動向を,時代,年齢,出生世代別に観察し検討した。
【方法】
 患者調査から,昭和35年から令和5年まで3年間隔で,歯科診療所の推定患者数から人口10万人当たりの受療率を性・年齢階級別に算出し,コウホート表を作成した。等計量線図による俯瞰的観察とともに,中村のベイズ型Cohortモデルによるcohort分析を実施した。
【結果と考察】
 等計量線図:年齢では,全時代を通じて小学生で受療率が高く,その後10歳代後半で一旦低下していた。時代の影響では,昭和36年の国民皆保険制度開始により,全年齢で男女とも受療率が急増していた。男女比較では,昭和50年代まで,女性では20~60歳で,男性では40~60歳で受療率が高く,女性の方が若いうちから受療していた。平成からは,男女とも60~80歳代へと,高齢者層に受療率の高い年齢が移った。
 cohort分析:時代効果では,国民皆保険制度開始の影響は明白であった。平成17年以降,女性で受療率が年々上昇し,女性の全年齢層で受療率が上がっていた。年齢効果では,男女とも中高生で大きく落ち込んだ後,女性は,成人期で回復してほぼ一定の水準を保つが,男性では,高齢になるまで受療率の回復は鈍く,65歳を過ぎてから女性を上回るようになる。男女とも75~80歳以降急速に低下する。cohort効果では,男女とも,昭和10年代生まれでピークとなる単峰性のグラフとなった。女性の方が,増加の大きさが優る。
 これらから,特に,現在80歳代の昭和10年代生まれの女性は,小児期の齲蝕が少ない世代(cohort効果)であり,発病が成人期まで遅れたため,ちょうど国民皆保険制度開始時期と重なり,早期処置が施されること(時代効果)となり,この時身についた歯科受療行動が壮年期以降生涯継続した(年齢効果)ので,結果的に歯を失わないで済んだ,という仮説を発想できた。
(COI開示:なし)(倫理審査対象外)