講演情報

[O-5-1]高齢者医療で見過ごされてきた筋筋膜痛―予防と早期対応の必要性―

○臼田 頌1、中川 種昭1、堀江 伸行1 (1. 慶應義塾大学医学部 歯科・口腔外科学教室)
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【目的】
 超高齢社会において慢性疼痛は,高齢者のQOL低下や要介護化を招く重要な要因である.しかし,口腔顔面痛の中で最も多い筋筋膜痛は,画像検査等では診断できず,筋触診を行わなければ見逃されやすい.さらに,医師・歯科医師教育の歴史が浅く,医療者の認知も十分とは言えないことから,高齢者医療においても見過ごされやすい.本研究は,口腔顔面痛患者における年齢層別の診断傾向を明らかにし,高齢者医療における筋筋膜痛への理解と予防的アプローチの重要性を検討することを目的とした.
【方法】
 2021年3月から2023年7月に当院口腔顔面痛外来を初診受診した157例を対象とした後方視的観察研究である.年齢,性別,主訴,紹介元科,診断名,病悩期間および治療期間を診療録より抽出した.筋筋膜性疼痛,顎関節症に起因する頭痛,頸・肩部筋由来の頭痛,筋性の開口障害を筋筋膜痛が関与する疾患として一括して解析した.
【結果と考察】
 主訴は頭痛,歯痛,顎痛,顔面痛など多岐にわたり,紹介元も歯科に限らず神経内科をはじめとする医科診療科に広がっていた.これは,口腔顔面痛が診療科横断的な課題であることを示している.
 診断では筋筋膜痛が関与する疾患が全体の約6割を占めた.65歳以上においても半数近くを占め,高齢者においても主要な疼痛原因であった.
 筋筋膜痛が関与する疾患の病悩期間中央値は12か月で,慢性疼痛の定義である3か月を大きく超えていた.高齢層ではさらに長く,75歳以上では中央値18か月であった.これは,一人での通院が難しい高齢者では受診までに時間を要しやすいことを示唆している.
 一方,治療はマッサージやストレッチなどのセルフケアを含む理学療法が中心であり,治療期間中央値は3か月,高齢者でも4か月と短期間で改善が得られていた.罹病期間にかかわらず,セルフケアを中心とした介入が有効であることが示された.
 特に高齢者診療では発症後の診断に依存するのではなく,家族や介助者を含む多職種が筋筋膜痛を共通理解し,日常生活におけるセルフケアを主とした予防と早期対応を行うことが重要である.
(COI 開示:なし)
(慶應義塾大学医学部倫理審査委員会承認番号 20180033)