講演情報

[O-5-2]地域包括ケアを担う歯科医療人養成に向けた教育連携モデルの実践と制度化への提言

○山添 淳一1、井上 良介1、奥 菜央理1、友岡 祥子2、藤原 晶子3、梅津 正和1、松添 さおり1、衛藤 希4、水谷 慎介3、森田 浩光5、岩佐 康行6、和田 尚久7、柏崎 晴彦3 (1. 九州大学病院 高齢者歯科・全身管理歯科、2. 九州大学病院 口腔総合診療科、3. 九州大学大学院歯学研究院高齢者歯科学・全身管理歯科学分野、4. 九州大学大学院医学研究院法医学分野、5. 福岡歯科大学成長発達歯学講座障害者歯科学分野、6. 社会医療法人原土井病院病院 歯科、7. 九州大学大学院歯学研究院総合診療歯科学分野)
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【目的】
 超高齢社会において歯科医療は,う蝕や歯周病治療といった従来の診療中心型モデルから,慢性期・在宅・看取りおよび災害時対応までを含む「生活と医療の統合」を担う役割へと拡張している。しかし現行の歯学教育は,依然として急性期医療に重点が置かれ,地域包括ケア,多職種連携,危機管理を体系的かつ縦断的に学ぶ枠組みは十分に整備されていない。本発表では,九州大学歯学部において地域包括ケアを担う歯科医療人養成を目的として構築した教育連携モデルの実践を紹介し,その教育的意義を踏まえ,今後の歯学教育制度およびカリキュラム改革への示唆を提示することを目的とする。
【方法】
 本モデルは,①大学間相互乗り入れ実習による急性期・慢性期横断学修,②介護医療院および訪問診療における多職種連携実習,③災害歯科口腔医療講義・演習の三要素から構成される。学生は,病院,介護施設,在宅,災害対応という異なる医療フェーズを体験的に学び,歯科の役割を全身・生活・社会の文脈で理解する機会を得た。自由記述や振り返り記録からは,対高齢者態度の変化,多職種連携への関心の高まり,地域医療への志向性の形成といった質的変化が確認され,将来の地域包括ケアを担う歯科医療人としての意識形成が示唆された。
(倫理審査対象外)
【結果と考察】
 本実践は,歯科医療人養成において「医療の場の分断」を超えた縦断的学修が不可欠であることを示している。特に,大学単独では確保困難な学修環境を大学間・地域間連携により補完する仕組みは,人材育成と資源配分の両面から有効である。今後は,①在宅・介護・災害関連実習の歯学教育コア・カリキュラムへの明確な位置づけ,②大学間連携実習の制度化および単位化,③多職種連携教育の評価指標と質保証の標準化,④卒後教育や地域医療政策との接続を含む人材育成体系の構築が必要である。さらに,教育効果の可視化と共有を通じた全国的なベンチマーク形成や,地域特性に応じた柔軟な実装モデルの提示も重要である。本モデルは,地域包括ケア時代に対応した歯学教育改革の具体的な実装例として,全国展開可能な枠組みであると考えられた。
(COI 開示:なし)