講演情報

[P-002]日本およびスイスの地域在住成人における口腔機能低下症の国際比較研究

○三上 理沙子1、松尾 浩一郎2、田中 美咲2、日髙 玲奈2、金澤 学3 (1. 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 先端材料評価学分野、2. 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 地域・福祉口腔機能管理学分野、3. 東京科学大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)
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【目的】
 口腔機能低下症(oral hypofunction:OHF)は,口腔清掃,口腔乾燥,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能,嚥下機能の7項目から評価される,多面的な口腔機能の軽度低下を捉える概念である。本研究は,日本とスイスの地域在住成人におけるOHFの有病率および特性を標準化された評価方法で比較し,年齢との関連および国による違いを明らかにすることを目的とした。
【方法】
 270名(日本153名,スイス117名)の地域在住成人を対象とし,日本老年歯科医学会の診断基準に基づき口腔機能7項目を評価し,低下を認めた項目数をOHF indexとし,OHF index 3以上をOHFと定義した。評価は,事前にキャリブレーションを受けた評価者が実施した。アウトカムはOHFおよびOHF indexとし,年齢,国との相関を多変量解析により検討した。さらに,年齢と国の交互作用について検討を行った。
【結果と考察】
 OHF該当率は日本30.7%に対しスイス49.6%と,スイスで有意に高かった(p=0.002)。OHFはスイス(オッズ比[OR]: 3.85, 95%信頼区間[CI]: 1.85–8.00, p<0.001),70代以上(OR: 5.73, 95%CI: 1.67–19.68, p=0.006, 20代と比較)に加えて握力(OR: 0.91, 95% CI: 0.87–0.96, p=0.001),残存歯数(OR: 0.94, 95% CI: 0.89–0.98, p=0.008)と有意に相関していた。さらに年齢と国の交互作用が有意であったことから,日本とスイスでは加齢による口腔機能低下の進行パターンが異なることが示唆された。スイスでは加齢に伴い口腔機能低下が連続的に進行するのに対し,日本では60代まで口腔機能が比較的維持され,70代で急激に低下する特徴的パターンを認めた。これらの結果から,口腔機能低下は単なる加齢現象ではなく,生活習慣,口腔保健行動などの文化的・社会的背景の影響を受ける可能性が示唆された。
(COI開示:なし)
(東京医科歯科大学倫理審査委員会承認番号:D2022-053-01、チューリッヒ州倫理審査委員会承認番号:Reg-2023-01106)