講演情報

[P-050]奈良県における後期高齢者歯科健診と総死亡リスクに関する歴史的コホート研究

○小向井 英記1,2,5、冨岡 公子3、周藤 俊治4、末瀨 一彦2 (1. 奈良県立医科大学 疫学・予防医学講座、2. 一般社団法人 奈良県歯科医師会、3. 奈良県立医科大学 県民健康増進支援センター、4. 奈良県立医科大学 地域医療学講座、5. 医療法人 小向井歯科クリニック)
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【目的】
 歯科健診受診者では死亡率が低いとする報告があるが,高齢者では要介護状態や居住する二次医療圏による医療環境の違いが,歯科健診受診と死亡リスクの双方に影響する可能性がある。国民皆歯科健診が議論される中,本研究では被保険者全員を対象者とし,これらの交絡因子を調整した上で歯科健診受診と総死亡リスクとの関連を検討した。
【方法】
 本研究は,奈良県後期高齢者医療広域連合からのデータ提供を受けて実施した歴史的コホート研究である。対象者は2016年度に75歳と80歳の奈良県後期高齢者医療制度の被保険者全員とした。対象者を2022年5月末まで観察し,保険資格喪失日と喪失理由により死亡日を把握した。非受診群を基準とする歯科健診受診群の相対危険を,コックス比例ハザードモデルで推定した。
【結果と考察】
 対象者は30,323名(歯科健診非受診群26,193名、受診群4,020名)で,男性は46.1%であった。観察期間の中央値は6.17人年で,期間中の脱落者は744名(2.46%)であった。観察期間中の総死亡者は5,405名で,全対象者の100人年あたりの死亡率は3.20であり,歯科健診非受診者では3.45,歯科健診受診者では1.69であった。歯科健診受診の粗ハザード比は0.49(95%CI:0.44–0.54)で,年齢,性別,要介護認定の有無,二次医療圏を調整したハザード比も0.55(95%CI:0.49–0.60)と有意であった。 本研究では,後期高齢者医療制度の被保険者全員を対象とした解析により,歯科健診受診者で総死亡リスクが低い関連を認めた。歯科健診は口腔機能低下や口腔疾患の早期発見を通じて,栄養状態の維持や誤嚥性肺炎予防に寄与している可能性がある。一方で,健診受診者は健康意識が高く,基礎的な健康状態が良好である可能性があり,これらによる交絡や残余交絡の影響を完全には否定できない。今後は,生活習慣や既存疾患等を含めた詳細な調整を行い,因果的関連についてさらに検証する必要がある。それでも本結果は,歯科健診の普及が高齢者の健康寿命延伸や医療・介護負担軽減に資する可能性を示唆する知見と考えられた。
(COI開示:なし)
(奈良県立医科大学医の倫理審査委員会承認番号4010)